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湯殿山麓呪い村


■公開:1984

■制作:東映、角川春樹事務所

■企画:

■監督:池田敏春

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■特撮:

■主演:W永島

■寸評:女性上位のミステリー


 若手の考古学者・永島敏行は湯殿山の寺に眠る即身成仏したミイラ発掘でひとやま当てようとしていた。永島は学者のくせに知恵の回る奴だったので、スポンサーとしてアテにしていた企業の社長・織本順吉から金を引き出すことを目的に、妻・山口果林と子供がある身の上でありながら、織本の 娘・永島暎子と不倫関係を続けていた。

 畏れ多くも御本尊で金儲けをしようというバチあたりな寺の住職・青木義朗は織本の妻・岩崎加根子の実兄。出資を迫る永島に対して織本は、ミイラを掘り出してはいけないという口伝書が寺にあることを根拠に金を出し渋る。その夜、織本は密室になった浴室で殺された。死体のそばには人間の手のミイラが添えられていた。

 織本と青木は湯殿山麓で御三家と呼ばれていた家の出で、もう一人は織本にだまされて資産をなくし、失踪していた。永島は大学の恩師や番組制作会社に頭を下げて回り、なんとか金を工面してミイラを堀返すことに成功するが、その姿は「仏」には似つかわしくないもがき苦しんだ末の無残な死体であった。ミイラの正体は、里の娘と結ばれてしまった破戒僧で、罰として古井戸に投げ捨てられていたが、御三家の祖先、今井健二、深江章喜、高橋明たちによって寺の普請費用捻出のイベント用として無理やりに即身成仏させられたのだった。

 ミイラ発掘の最中、行方不明になった青木の死体がやはりミイラの手とともに古井戸から発見された。同時に、失踪していた御三家の最後の一人・榎木兵衛も睡眠薬入の酒瓶を抱えて凍死していた。永島は事件の真相を探るうちに、永島暎子の実の母親が榎木の娘で、岩崎の娘・仙道敦子の実の父親は榎木の息子であることが判明。このややこしい関係に追いうちをかけるように、永島暎子の実母は青木と織本に村八分にされた上に犯されて、自殺までしていた事実が明かになる。

 織本の死体のそばにあったミイラの手は、永島暎子の実母と叔母のものだった。事件の真犯人は若干14歳の仙道敦子だった。

 仙道は妊娠していて、相手の父親は岩崎の浮気相手、つまり仙道の実の父親の息子だった。仙道は腹違いのお兄ちゃんと偶然デキてしまったのだった。仙道は忌まわしい血筋の証拠を消すために母親の岩崎と腹違いの弟と連携プレーで織本と青木を殺していた。おまけに途中まで協力していた実の祖父に当たる榎木まで殺してしまっていたのだった。

 岩崎は仙道を守るために真相を知った永島敏行を殺そうと無理心中を迫るが失敗し自分だけ焼け死ぬ。からくも生き延びた永島は、湯殿山麓の温泉街で売春婦におちぶれていた永島暎子と再会、しかし酔っ払った彼はうっかり彼女を突き飛ばし、はずみで殺してしまう。錯乱した永島は雪の中を彷徨ううちに寒さで意識を失う。かくて事件の真相を知るものはみな死んだので、大安心の仙道。かと思ったら、消すに消せない血脈の呪いのためか、彼女は若い夫とともにバイクで喫茶店にダイビングして死んだ。

 げに恐ろしきは女の執念ですな。普通このようなミステリーには探偵さん(工藤ちゃん、ではなく)がいるもんだが、本作品では犯人と被害者と狂言回ししか出てこない。つまり、事件は全然、解決せずに終わってしまうのである。警察サイドのメインが三谷昇なので、これまた頼りにならんのは火を見るよりも明らか。

 ややこしい人間関係は相関図がいるくらいだったが、そんな中で単純に面白かったのは今井健二と青木義朗、および高橋明と深江章喜ら悪役俳優一同の誇張気味の秋田弁トーク。ネイティブが聞いたら血管ブチ切れそうなベタベタのいなかっぺ風アレンジが深刻なシーンをお笑い色に染めまくり。コワモテは東北弁喋っちゃイカンな、やっぱり広島弁じゃないとね。

 年上の岩崎加根子に無理心中を迫られ、永島暎子をうっかり殺してしまい、仙道敦子には良いようにあしらわれ、そして本妻である山口果林には冷たくされたんじゃあ、元高校球児の永島敏行でも歯が立つまい。

 そんな女性上位のミステリー。

1998年08月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16