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兄貴の恋人


■公開:1968年

■制作:東宝

■企画:

■監督:森谷司郎

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■特撮:

■主演:加山雄三

■寸評:あなたの兄貴が(妹が)××だったら?


 サラリーマンの加山雄三には年頃の妹・内藤洋子がいる。内藤は加山の世話女房のようにいつも傍にいて、加山の女性関係にいちいち目くじらを立てる。加山は打算的な結婚を望んでいるのだが、内藤もかわいい。内藤にはボーイフレンド・東山敬司がいる。

 ある日、若い女性社員・酒井和歌子が退職することになった。彼女にはやくざな兄・江原達怡がいる。酒井は病気の母親の面倒をみながら叔父・人見明が経営する川崎のバー喫茶で働くのだと言う。酒井の送別会に出席できなかった加山は酒井の働く店を訪ねた。あまり柄の良くない客が集まる店だったが、加山はそこで酒井の幼馴染み・清水紘治に会う。

 会社の重役・清水元の紹介で加山はさる企業の重役・北竜二の娘・中山麻里と見合いをした。理想的な相手に出会った加山は酒井のことが急に気になりだし、中山との縁談を断わってしまう。酒井にプロポーズしようと店を訪ねた加山は江原とやくざのトラブルに巻き込まれてしまう。

 米国赴任の出世話も御破算となり、加山の母・沢村貞子としては酒井との結婚には反対だった。周囲の雰囲気を察した酒井は加山のプロポーズを断わった。酒井や中山と結婚しそうになった兄を見ていてやきもきしていた内藤はほっと一安心して、思いきり兄に甘えようとするが、加山は酒井にふられたショックで落ち込んでしまう。

 内藤は初めて兄貴の結婚を応援することにした。福岡へ左遷が決まった加山のために酒井を説得する内藤。酒井は内藤に励まされ加山に自分の本心を伝えた。内藤は兄貴をとられてちょっぴり寂しかったが、やさしい東山と一層仲良くなった。

 兄に愛される幸せから、兄を愛する辛さへ変化する繊細な心模様を、内藤洋子がストレートに演じる。この、純情で感情の起伏の激しい妹役は一歩踏みはずすとただのアブナイ人になってしまう役どころである。そうはならないのは、役者のキャラクターの勝利というところだろう。

 女性なら自分の兄貴が加山雄三だったら?男性なら自分の妹が内藤洋子だったら?なんてワクワクしちゃったであろう当時の観客にとってはこの映画はまさにハートをグッとわしづかみされたようだったのでは?

 また、内藤洋子のような一本気な女性はちょっと、という貴兄には家族に恵まれない貧乏な酒井和歌子の控えめな女性象がこれまた胸キュン!ってところだろう。

 だけど実際はこんな妹がいたら絶対にソイツとは結婚しないだろうし、周囲を気にして身を引くなんてことはまず考えないのが女性の本音だ。とりあえず福岡とかアメリカに飛べば妹はくっついてこないから、さっさと子供を作って加山さんをしっかりキープ!というふうに考えるのが普通だ。

 もちろんターゲットが加山さんだからこその説得力である。

 ほとほと左様に女は現実的なのだ。やっぱり男が描く青春恋愛映画って大甘だなあと思う反面、男はいくつになってもロマンチックな恋に憧れてるという本音がよく分かる。映画は夢産業とはまさにこういう作品のことを言うんでしょうな。

 戦中派の加山雄三の父役で宮口精二、訳知りのバーのマダムに白川由美、加山に丘惚れのOLに岡田可愛が扮している。特に白川由美が圧倒的に美しく現代(とは言うものの60年代後半だが)娘である内藤と好対象。それぞれの時代の人々が感じる現代(とは言うものの60年代後半だが)が情感豊かに描かれた作品。

1998年08月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16