「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


マッハ78


■公開:1978年

■制作:三協映画、松竹富士

■企画:梶原一騎

■監督:三保敬太郎

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:大友千秋

■寸評:スーパーカーブームとは何者であったのか?


 スタントドライバーの大友・大友千秋は米国籍だったが、日本育ちのため英語はまったくできなかった。ある日、両親の故郷であるロサンゼルスで映画の撮影現場に居合わせた大友は、日系人の同業者が車の整備不良を言い訳にスタントを断わっているところを目撃する。

 外見は完璧なアングロサクソンだが心は大和魂というややっこしいアイデンティテーを日本語だけで説明しようとする大友を、現地のスタントドライバーは「日本人みたいな向こう見ずなバカはお呼びでない」と侮辱する。

 佐藤蛾次郎みたいなチンケな日系人とのささいな言い争いからイキナリ「日米スタントドライバー・コンペティション」という大がかりなイベントがスタート。本職のスタントドライバーたちによる、片輪走行や8字走行やらのスーパーテクニックが披露される。

 「バニシング・イン・60セコンド」は、デニス・ウィーバーにそっくりなH.B.ハリッキーというカースタントマンが監督と主演をした作品であるが、言わんとするところは全く同じ。壊れるのがアメ車ばかりというのがお約束であるが、一応、申し訳程度にヨーロッパのスーパーカー(ランボルギーニとかフェラーリとかポルシェとか)が登場する。

 主人公は自分が運転中に事故を起こし同乗していた姉を死なせているという暗い過去を持っていて、たまたまロスで知り合った金髪美人が死んだねーちゃんにそっくり、というとってつけたようなラブロマンスもあることはあるのだが、およそドラマらしい展開は何もない。

 コンペティションって言うから何すんのかと思ったら、件の金髪アメリカ娘が公式記録員をやってる程度の実にいいかげんなシロモノ。発表される点数も何を根拠に算出しているのかサッパリ分からない。

 「バニシング〜」は車泥棒と警察のチェイスが見所だから、パトはもちろん、逃亡中の車がガンガン横転してくれるのだが、こちらはあくまでも競技である。従って舞台はテストコースやサーキット、たまに公道だと、現地の警察が全面協力で交通を遮断してくれたフリーウエイなので緊迫感まるでナシ。

 やっとこさ登場したヨーロッパの高級スポーツカー軍団。これみんな壊すのか?と期待していたら車の名前が延々と字幕で紹介されて、テストコースでレース仕様のポルシェが単独でドリフト走行する、ただそれだけだった。

 クライマックスは本作品の実質上の主役、クロスレーシングの社長・黒子昭。ポルシェに乗って、海を目がけて派手にジャンプ!新記録樹立でオメデトウ!なのだった。

 あの頃、「右利きの人は右ハンドル、左利きの人は左ハンドル」なのだと思い込んでいた車音痴の私ですら、ファイヤーバード・トランザムとかロータス・ヨーロッパが「何であるか」知っていた。そんなわけだから、高級外車のエンジンルームを舐めるように撮ったシーンや、ランボルギーニ・イオタのどアップなどは、お姉さんの太腿と同じくらいの興奮を観客に与えていたであろうことは容易に想像がつく。

 ブームというものは、後世の人から見るとまるっきり意味不明であることを実感できる、たとえ同じ時代を経験していても「分からんものは分からん」のだが、、。ともかく、車好きな昔の子供には嬉しい作品だろう、たぶん。

1998年08月20日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16