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エスパイ


■公開:1974年

■制作:東宝映像

■監督:福田純

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:藤岡弘

■寸評:見るほうも大人になろう!


 超能力を警察力として生かす組織のリーダー・加山雄三は、優秀な潜在能力を秘めたレーサー・草刈正雄をスカウトする。草刈はまだ自分の超能力をコントロールできなかったが、仲間とともに日々、訓練に励むのであった。

 加山の組織には由美かおる睦五郎藤岡弘らがいて、彼等はそれぞれに得意な超能力を備えていた。草刈は加山たちがエスパイと呼ばれていることと、そのエスパイに対抗する逆エスパイという組織が存在すること知る。

 逆エスパイのリーダーはウルロフ・若山富三郎という人物であった。

 若山は日本で開催される世界平和会議を粉砕すべく、逆エスパイの殺し屋・内田勝正に某国の大使暗殺を命じる。中近東で若山の動向を探っていた由美は若山の配下に誘拐され催淫剤という「頭の中がヤラシー気持ちで一杯になる」薬を盛られ、あわや犯されそうになるが、藤岡の必死の反撃で間一髪セーフ。しかし藤岡は高電圧のショックで超能力を一時的に失ってしまう。

 北欧の別荘に身を隠していた要人警護に赴いた藤岡と草刈は、老師・岡田英次の助けを借りて暗殺団と対決。街中の教会の鐘を鳴らして超音波を発生しモスラでも呼ぶのかと思いきや、そのおかげで超能力者たちの頭がパーになるという物凄い攻撃をしてきた逆エスパイたちを、藤岡は体力で、草刈は超能力で、各々こっぱ微塵に破壊した。

 日本へ戻った藤岡は、敵方に半裸にされたショックで超能力がスキルアップした由美かおるとともに国際会議の警備にあたった。体力しか自慢できない藤岡は植木鉢を運んだりして地味に働く。その頃、草刈は催眠術にかけられてあわや殺されそうになっていた。そこへかけつけたのは、草刈の愛犬。再び肉弾戦で敵を粉砕した藤岡は草刈に「超能力の真髄は愛である」と熱く説くのであった。

 爆弾を仕掛けられた車に閉じ込められた藤岡弘は、国際会議のレセプションを大地震の幻覚で台なしにしようとしていた内田勝正の存在を由美のテレパシーで感知し、瞬間移動で爆発から逃れ、会場で銃を構えた内田に体当りして暗殺を阻止、ついでに超能力も回復してしまうのだった。

 誘拐された睦の救出に向かった藤岡、草刈、由美の三人はそこで若山富三郎から意外な事実を知らされる。若山は親子二代にわたる超能力者で、彼の父親は凶悪犯罪の犯人をその特殊能力で言い当てたが、犯人しか知らないはずの事実を知っていたため犯人と間違われ処刑されていた。そのため若山は極度の人間不信となり人類を戦争によって滅亡させ、超能力者が支配する世界を作ろうとしていたのだった。

 藤岡と由美のアツアツカップルにあてられたわけでもないだろうが、若山は「愛こそが超能力」なのだと自分の行為を後悔した瞬間、藤岡の超能力で噴き出した暖炉の猛火に包まれてしまう。藤岡たちは同類のよしみか、思わず憐憫の情をもよおすのであった。

 自分に超能力があったらいいなあ、と思ったことのある人は多いだろう。だが、しかし、本作品の草刈正雄のように、カッとなっただけで相手が爆発しちゃったら困るだろうことは想像に難くない。触れたものはなんでも金になってしまうミダス王では困るのだ。

 また、藤岡弘の様に突然、その能力がなくなっても困るだろう。そうなるとやはり人間、体が資本であるから藤岡弘のように日々鍛練を怠ってはいかんなあ、と納得するわけだ。

 本作品で一番カッコ良かった超能力者は、他の誰でもなく実はクールなスナイパー役の内田勝正である。およそ台詞らしいものはほとんど無かったが、なんとなく中立で他の役者が過剰な演技合戦を繰り広げる中での冷徹な横顔はまさに役得。冒頭、透視能力を駆使して列車の中の要人を次々に射殺するシーンのカッコ良さはまさに大人の超能力者(?)の魅力と言える。

 悪の首領である若山先生だが、やはり本作品のような予定調和的なバケモノ役はイマイチ。あと、チャンバラ無いのも寂しいし。若山先生には「迫力」というものすごい武器があるので、それでもって藤岡弘と対決してくれたら凄く良かったのになあ。

 この作品、アラばかり探すとうんざりするほどあるので止めた方がいい。技術論に走ってはオタクになってしまうので、ここは一つ、大人のマインドで楽しまねばいけない。特撮映画だと思わなければ良いのである。傷心の恋人を、無教養で純粋(単純)な男が体当りの求愛でゲットしたという単純明快な恋愛ドラマだと思えば、結構イケルよ、この映画(ほんとか?)。

1998年08月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16