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くノ一忍法


■公開:1964年

■制作:東映

■監督:中島貞夫

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:大木実

■寸評:「北の国から」中原早苗


 大阪城落城寸前になって、知将、真田幸村・北村英三は、信濃の女忍者・中原早苗、芳村真理、葵三津子、三島ゆり子、金子勝美、に、子供ができない千姫・野川由美子に代わって秀頼の子種を得るように命じた。その子を守り育てて豊臣の血筋を栄えさえ末代まで徳川家を呪う気なのである。

 炎上する本丸から千姫と腰元たちを助けたのは、顔に醜い傷のある徳川方の大名・露口茂であった。千姫の生還を心から喜んだ家康・曽我廼屋明蝶は服部半蔵・品川隆二から、腰元たちのなかに秀頼の子供を身ごもった真田の女忍者がいるらしいと聞き千姫に問いただすが、父親を恨んでいる千姫は当然ながら非協力的。困った家康は半蔵に女忍者どもを密かに始末をするよう命じた。

 「顔じゃないよ、心だよ」という言葉の意味が「顔がブサイクな奴はせめて性格くらいは良くないと一生モテないぞ」であると正しく理解していた露口は、未亡人である千姫を「気の毒だからなぐさめてあげたい」というキレイキレイな理由をつけて屋敷へ連れ帰るように家来に命じた。いさんで千姫の屋敷に赴いた小姓たちは、芳村真理の忍法「男が見るとハダカのねーちゃんたちが踊っているように見える」不思議な仏像にあやつられて井戸に落ちて全滅。後を追ってきた忠義な武将も術にハマり、三島ゆり子に精気と血液をすべて吸い取られ干物のようになってしまうのだった。

 相手が千姫なので手荒なことができないので、困った半蔵が呼び寄せた「女をオトす、その道のスペシャリスト・チーム」のメンバーは大木実、待田京介、山城新伍、吉田義夫という一癖も二癖もありそうで、かつ、思いっきり手癖の悪そうな面々(ただし大木実は除く)なのだった。

 一番手の小沢昭一は、腰元に変身して探り出そうとしたが、葵三津子の捨て身の術で正体を見破られて倒される。山城新伍は三島ゆり子とまんまと合体するが「抜けなく」なってしまい、まるで虎鋏にかかったキツネのように身動きできないところを殺される。

 その道の大ヴェテランである吉田義夫は、家康の側室・木暮実千代の体を借りて腰元たちの心臓の鼓動を聞き分け、懐妊していた芳村の正体を見破るが、芳村は木暮の子宮に子種を移動させるというトンデモナイ忍法で難を逃れた。妊娠した木暮は吉田に堕胎を依頼する。スケベな吉田はこともあろうに木暮とセックスしようとしたが、木暮の体から子種を奪いに来た芳村に精気を抜かれてしまう。

 残ったのは二枚目の二人。大木と待田は駿府城を抜け出した千姫、芳村、中原、三島の後を追う。待田は三島にあやうく「抜かれ」そうになるがぎりぎりセーフ、妊娠していた芳村の怪しい仏様の術もクリアするが、芳村の捨て身の攻撃に敗れる。最後に残った大木は千姫らの母性に感動し後を追ってきた半蔵を倒して千姫を救う。誇らしげな笑みを浮かべた千姫とは対照的に、病床に伏した家康は「女が襲ってくる、、」と言い残し息絶えた。

 本作品に登場する馬鹿馬鹿しい忍術の数々は概ね「頭の中がすごくスケベになった人間はイチコロ」という統一コンセプトがあるので、当然、画面もソレっぽい絵柄が延々と、延々と続くのだ。悶々とした感じをビジュアライズするために弁天様とか天女とかに扮した大阪松竹歌劇団の、顔はともかく体はイカスおねーさんたちの舞踏三昧は風変わりなリンチでも受けているような、えも言われぬ感動を見るものに与える。

 さて、なんと言っても見所(そうだろうか?)は子種を移植する芳村真理と木暮美千代のカラミ合い!なんか凄そうでしょ?見たいでしょ?残念でした、ここは画面暗転で二人の喘ぎ声のみなのだった。それでも十分に凄いが。

 あまた登場する奇想天外なエロ忍法の中でもいろんな意味で極めつけなのが、半蔵の手下に鉄砲で撃たれて絶命寸前の中原早苗が、真っ白な雪の上で股の間からもうもうと桃色のスモークを噴き出すというビジュアル的にも強烈な「吸っただけで頭の中が悶々としちゃう霧」の術。そんなもん吸ったら確実に死ねるだろうことが一目で分かる実に説得力のある術である。おまけに陣痛に苦しみ悶えて大暴れする中原早苗の絶叫という効果音とも相まって、本作品中ピカ一のえげつなさであった。

 とにかく男性忍者チームはおしなべて儲け役である。男好きになる忍法で積極的にセックスした挙句に殺される女性チームとしては、どうせ大木さんはそういうことしないだろうから、せめて待田京介か新伍ちゃんにしてほしいと思うのは当然なので、小沢昭一の相手をさせられた腰元2名に対しては同性としてつい同情してしまった。

 早々に死んでしまう幸村と佐助のナレーションで進行する本作品の脚本は「前略おふくろ様」の倉本聰。ラストの雪原での大バトルに富良野への憧憬がひしひしと感じられる、お色気時代劇。

1998年07月19日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16