「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


OL忠臣蔵


■公開:1997年

■制作:ケイエスエス

■監督:原 隆仁

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:坂井真紀

■寸評:


 通販会社、オレンジハウス(オレンジページとカタログハウスの合体、ほいでもってブランドロゴは東急ハンズのパクリ)に勤めるデザイナー・坂井真紀は、商品が返品されたことを理由にクレーム処理課へ転属を命じられる。

 落ち込む坂井の前に、米国の通販会社の女性マネージャー・南果歩が現われる。坂井は南に「お客様の生の声を聞くことは必ずプラスになる」と励まされる。OL仲間である重役秘書・細川直美奥山佳恵らはさっそうとした南のファンになる。

 ある日、坂井は謝りに出向いたサナトリウムでオレンジハウスのファンだというやさしい老女・草村礼子に出会い、自分がデザインした商品を愛用して貰っていることに感激する。

 南が持ちかけた業務提携の話に社長・長門裕之は即座にオーケーを出した。その矢先、提携先が倒産し、社長は責任をとらされて辞任に追い込まれる。南と手を組んだ重役・小坂一也は社長とともに人望のあった重役・江藤潤も小会社へ出向させる。会社は強引なリストラを断行し、真っ先に目を付けられたが坂井らのOL軍団なのだった。

 配送センターのフォークリフト運転手・吉野公佳も解雇されることになった。坂井は南の強引なやり方に抗議すべく仲間を募って労働基準法をタテに戦い始めた。南とメインバンクの支店長・大河内浩との密会を盗聴した坂井は、南の目的が会社の経営権ではなく、企業買収であると見破る。

 自社株の買い占めを進めていた南は株主総会で役員の改選を強行するつもりらしい。坂井は経理課のOLチームと手を組み、前社長の長門と委任状を返送してきた大株主(南州太郎、他)を一人づつ訪問し総会へ出席してもらい、南の陰謀を食い止める作戦をとった。

 これを察知した南は手下・斎木しげるに、長門の出席を妨害するため彼を監禁するように命じる。南のやり方に反発を覚えた日系米国人のアシスタント・高杉亘は、坂井に長門が配送センターにいることを教える。斎木らに発見された坂井と長門を救ったのは元ヤンキーの吉野だった。

 吉野が運転するフォークリフトで無事に総会会場へ到着した坂井だったが、南は自分の企みを暴露した上で、どうせ倒産する会社なんだから持ち株を自分に譲渡するよう株主に告げた。

 切羽詰まった坂井は株主達に「自分たちは私利私欲ではなく、会社と顧客を愛しているが故にがんばったんだ」と正直に訴えた。株主達は坂井の演説に感激し、持ち株を手放さないことを約束した。南はついにあきらめ、長門は無事に社長に復帰した。坂井たちはまた元どおり働けることになった。

 悪漢の斎木しげるに対して、長門裕之と坂井が倉庫で乱闘する。積載された荷物の上で大暴れする長門裕之の脳裏に去来するのは、自分がまだ「サザンの桑田(に、よく似ていた)」だったころの名作「豚と軍艦」であろうか?(ちがう、ちがう)。

 南果歩のイジワルおねえさんは面白い役作り。「ワーキングガール」のシガニーウィーバーみたいな「デカくてオッカナイ」っていうフィジカルな迫力はないけど、坂井真紀レベルの小物相手にはピッタリ。うんと憎々しくて嫌味ったらしいが、どこか憎めないという懐かしいタイプの仇役。

 コミカルな仕立ての中で、ただ一人ハードボイルドなキャラクターなのは、流暢な英語を喋る高杉亘。「眠らない街・新宿鮫」でストイックな殺し屋を演って以来、その、松田優作に精神的な薫陶を受けたような風采には期待値大である。今回の役どころでは、もう少しセックスアピールが欲しいところだが、メインが男だか女だかよく分からない坂井真紀や南果歩では無理な注文か。

 オチの甘さは仕方無い。大団円なんだからコレはコレでヨシとしようではないか。

 ちょっとアナクロで空々しいかもしれないが、企業や集団の中にいるととかく見失いがちな、社会に対する感謝と奉仕の心こそビジネスの基本だというメッセージは、とげとげしくなって来たニッポンビジネスマンの心を必ずや暖めてくれることと信ずる。たとえそれが使い捨てカイロ程度でもね、必要なんだよそーゆーのが、今は。ガンバレ、ニッポンのビジネスマン!

1998年08月20日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16