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風速75米(メートル)


■公開:1963年

■制作:大映

■監督:田中重雄

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:田宮二郎

■寸評:プラス35メートルの大迫力!


 新聞者の若手記者・宇津井健は「東京に台風が来襲したらビルのネオンはとても危険だ」と告発する記事を書く。宇津井の恋人・叶順子はネオン建築会社の社長・見明凡太郎の一人娘。見明の会社は生真面目な技師・菅原謙次や、一本気な現場監督・早川雄三らがいるので、小さいながらも関東では抜群の信頼を得ていた。関東進出を企む関西のライバル会社の社長・菅井一郎は見明の会社に度々、いやがらせをしていた。

 社運を賭けたビルのネオンがやくざ・高松英郎たちによって爆破される。責任を感じた見明は借金をしに行った帰路、タクシーの運転手に化けた高松に射殺される。すべては菅井の陰謀だったが、証拠はない。会社を引き継いだ叶は、偶然に学生時代の同級生で今は菅井の手先となっている実業家・田宮二郎に再会する。お互いの身分を知らない二人は愛しあうようになるが、やがて叶は田宮の正体を知ってしまう。

 田宮も叶の父親が見明であることを知り、菅井に協力することが苦痛になってくる。超大型台風が接近する最中、菅井は再び、工事の妨害を田宮に命じる。田宮が裏切りそうだと知った菅井は高松に後を追わせる。田宮は、宇津井とともに自分を殺そうとした高松を倒し、菅井を射殺する。風速七十五メートルの強風のなか、ビルの屋上の現場を離れようとしない叶を救出すべくかけつけた田宮は、叶をかばって倒れてきたネオンの下敷きになって死んだ。

 日活の「風速四十米」と酷似した内容の映画である。物語の核となるのが企業乗っ取りであること、クライマックスが台風であること、特撮の見せ場がビルの建築現場であること。

 風速がアップしたぶんだけ特撮シーンは素晴しく、日活作品よりもグーンと迫力がある。もちろん日活のほうはそっちがウリじゃないんだから当り前かもしれないが。ビルの谷間をものすごいイキオイで駆け抜ける大津波。この映画の主役はバケツの底がぬけたような大容量の水である。

 この作品はモノクロであったため、伊勢湾台風のニュース映画を時々、何気で流用するというこずるい(?)テも使っている。なんてったってホンモノには勝てないよねえ。その分を差し引いてもその圧倒的な風圧と水量は本当にコワくなるほどで、自然の猛威を十分に表現したと思う。

 情緒のない視線と硬直演技の宇津井に対して、叶に対する淡い恋心と野心との板ばさみになってしまう田宮二郎は色気もあってまさに役得。叶に正体を見破られてオロオロするところもカワイイ!苦悩する二枚目ってのはそれに相ふさわしい男優を得ると実によろしい役どころですなあ。やたらと正論と正義をふりかざし、社会の木鐸を気取る新聞記者って人種もキライだが、この作品の宇津井健ってホントーに単なるアホに見えてしまう。

 「台風は天災じゃない、人災だ」という宇津井の清々しいラストの言葉には大いなる賛同の意を表するが、なんかこのキメ台詞のおかげで、特撮あり大人の恋ありで盛りだくさんの社会派サスペンスドラマが、単純明快な文部省特選の「教育映画」みたくなっちゃったような気がするのは私だけか?

1998年05月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16