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赤いダイヤ


■公開:1964年

■制作:東映

■監督:小西通雄

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:藤田まこと

■寸評:借金王・藤田まことによる一世一代の大バクチ映画※この映画はフィクションです※


 多額の借金を抱えて入水自殺をしようとした青年・藤田まことは小豆相場の神様といわれる相場師・曽我廼屋明蝶に助けられる。藤田には昔から憧れのマドンナ・三田佳子がいる。華族の出で実業家でもある彼女をモノにすべく彼は小豆相場で身を立てるために奮闘する。藤田は明蝶から貰った金と母親・ミヤコ蝶々のへそくりを元手にデカイ商売をしようと誓うのだった。

 三田は藤田を軽蔑しており、単なる商具としてしか考えていなかった。三田は明蝶のライバル相場師・松本染升の手先になった男・田中邦衛にそそのかされて穀物取り引きの仕手戦に参加する。明蝶と組んでいた商事会社の社長・河合弦司は小豆相場を高騰させるため大量の買い占めを行っていたが、裏では松本と組んで小豆の代わりに大豆を購入し、ひそかに松本の指定倉庫へ小豆を納めていた。

 やがて松本の思惑とおり小豆相場は暴落し始める。藤田の友達の新聞記者・亀石征一郎の調査で松本の不正が明るみに出たが彼は保釈金を支払って出所しすぐに相場に復帰。松本は北海道の農協をリベート攻勢で抱き込み、現地の小豆を買い占めた。それを一気に放出して明蝶に大損させるつもりなのだ。そうはさせじと北海道にやってきた藤田であったが農協の決定に逆らえない百姓たちは小豆を一粒も彼に売ってくれない。それなら自殺する!と騒いだ藤田に驚いた長老・左卜全は根負けして藤田に小豆を売ってくれた。

 松本側についていた三田は、藤田とホテルに一泊しすっかり信用させておいて、小豆を輸送する船の船長・大村文武に色仕掛けで迫り、藤田が用意した東京の倉庫ではなく横浜の松本の倉庫に小豆を運ばせようとする。商品取り引きの最終日、してやったりの三田のもとへ船が沈没したという知らせが届く。小豆相場は高値で終了し、明蝶は大儲けした。全財産を失いプライドが傷ついた三田は藤田の前から去ろうとするが、藤田は彼女の後を追っかけて堂々とプロポーズした。

 赤いダイヤと聞いて、最初はルパン映画かと思ったがこれは小豆(しょうず)の事を指すのだった。商品先物取り引きってなんとな〜く怖いイメージ、ありませんか?絶対に損するゾっていう先入観。実際はそんなことないんだろうけど、なんかものすごくうさん臭い感じがしない?もちろんこれは私がまったくの素人だからだろうけど。

 実業に従事していない人々というのは限りなく怪しいのである、私にとっては。

 そういう一般人にとってはまったくの別世界で展開するドタバタ風刺劇。そのテイストは加東大介の「大番」を思い出してもらうと分かりやすいかも。

 ペラペラとテンポよく話は進むのだが、狂言自殺の田舎芝居でコロリとだまされる百姓ってのはあまりにもリアリティが無さ過ぎた。まあ当時はそれだけ純朴な時代だったということなのだろうが、もう少し大人っぽい展開は無かったのだろうか。すべて原作とおりなら仕方無いかもしれないが。それに、一発大逆転が偶発的な海難事故ってのもちょっと肩透かし。これもすべて見ている私が実態を知らないからなのだろうけど、全体にざっくりとした印象は拭えなかった。

 テレビでは藤田の役が大辻伺郎、三田の役は野際陽子だった。ヴァイタリティあふれる大辻も魅力があったが、映画版の藤田はどこか飄々として憎めずしかもシャープなところがあって適役だ。高慢ちきな女傑の三田佳子も、美人だが毒を含んだプライドの高さがよくお似合いでこれまたハマリ役。

 小西通雄監督と言えば「キイハンター」などテレビ映画の方が有名だろう。劇場用映画では日本映画史上最も濃い二枚目と言われる高城丈二の「悪魔のような素敵な奴」というのがあるが、あれも元はと言えば本作品同様、テレビ番組であった。つまり、この監督のテイストはとっても「テレビ的」だと言うことだ。

 こういう業界裏話的な物語は実にテレビ的なテーマであると言えるのだから、小西監督の起用はきわめてスジの通る話なのである。デキの善し悪しは別にして。

 映画とは直接関係無いが、テレビのオリジナルで主演した大辻伺郎は自殺した(一説には借金苦)し、映画の藤田までが実人生において事業に失敗して借金地獄ってのは少々デキすぎじゃないのか?他人としては面白すぎるけど。

1998年06月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16