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十一人のギャング


■公開:1963年

■制作:東映

■監督:石井輝男

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:鶴田浩二

■寸評:銀歯とジャリっぱげの健さん


 「七人の侍」「十三人の刺客」「十一人の侍」そして「十一人のギャング」である(なわきゃないか…)。

 鶴田浩二杉浦直樹は浜松の工場で月末に支給される従業員の給料、総額五億円の強奪計画を練っていた。実行犯のメンバーは鶴田が、ドライバーのスカウトは杉浦が担当する。鶴田は舎弟の江原真二郎に事件の詳細は知らせずにヤバイ仕事を任せられる仲間を探すよう命じる。江原は銃砲店の主人・待田京介とちんぴら・高英男を仲間に入れる。杉浦はきっぷの良い前科者の運転手・高倉健を仲間にしようと彼の恋人・三原葉子に接近するうちに深い仲になってしまう。

 江原たちにギャランティーを支払うために、鶴田は富豪のマダム・木暮実千代とその秘書兼愛人兼用心棒・丹波哲郎がいる屋敷に乗り込む。資金のめどがついた鶴田は外人バーの経営者・アイ・ジョージから拳銃を調達する。杉浦からこずかい銭をもらって酔っ払った高倉が近々大金が入ると三原に漏らしてしまう。三原は勤めていたキャバレーの経営者でやくざの親分・安部徹に密告する。

 いよいよ計画実行の日。鶴田は愛人・瞳麗子の運転する車で江原たちが待機しているホテルに向かった。その後を安部とその部下・梅宮辰夫、日尾孝司、伊沢一郎らが追う。高倉は三原を杉浦に寝取られたのに腹を立て、突然降りると言い出した。疑り深い江原たちは鶴田の計画に不審を持ち始めていた。

 身内に爆弾を抱えつつ襲撃は開始された。現金を袋に詰めている最中、江原と待田が鶴田を裏切って横取りしようとするが、あらかじめ鶴田に拳銃の弾を抜かれていたのでたちまち抵抗できなくなる。瞳の車で現場から逃走する鶴田と江原たち。途中、鶴田は高倉が運転するトラックに乗り換える。そこには現金袋を持って先に逃げた杉浦と杉浦の後を追ってきた三原がいた。

 瞳の車が安部たちの車と遭遇した。弾のない拳銃しか持っていなかった江原、待田、高らは全員撃ち殺され、瞳も流れ弾に当って死ぬ。安部たちは高倉のトラックにたちまち追い付き、壮絶な銃撃戦が始まる。三原と杉浦を守るために高倉が安部の車に突っ込んで爆死。杉浦が撃たれ、三原を庇った鶴田も安部と撃ちあって死んだ。

 フィルムノワール風のジャズっぽいテーマ曲が抜群にカッコイイ。ドライなキャラクターが多い中で、銀歯にジャリっぱげというものすごくカッコワルイ運転手を演じた健さんのなんともユーモラスな味わいが目立つ。やはり監督、鶴田のナルシスティックな芝居が嫌いだったんかねえ。特別出演のアイ・ジョージ、江原や待田のバタ臭い面々のモダンなムードに対して、鶴田浩二の湿っぽいムードがどうも水と油の感あり。

 鶴田に小金を融資して強奪した現金を折半しようとする正体不明のマダムを演じた木暮実千代と丹波哲郎はいきなりベットインしているのであるが、なんともコレステロール値の高いコンビだと思わないか?仮にもギャングと名の付く鶴田と杉浦を前にして少しもビビらず(ビビった丹波さんも木暮さんもちょっと想像つかないけど)堂々とリベートを要求するその姿にはさすがの安部徹がカワイク見えてくるほどの悪玉ぶりである。自分が手を汚さないんだから、やっぱりこの二人がいっちゃん悪い人達だよね。

 安部の子分を演じた梅宮辰夫はこの頃はまだ女狂いのデブではなく、客受けの悪いヤサ男であるが見方を変えればスマートな二枚目である。台詞は棒っ切れを飲んだように無愛想この上ないが、この映画の生活感のないモダンなタッチにはぴったんこであった。

 鶴田の実家がものすごく貧乏で母親は軍手を作る内職をしている。その妹は「からたちの花」の本間千代子。本間は高校生で生活費を稼ぐためにオモチャ工場でアルバイトをしているという「生きる」的な世界。鶴田の母親を演じたのは戦前からの大ヴェテラン、吉川満子。なんでこんなところに、とも思うがあのクサイ鶴田を向こうに回してとっても自然でしみじみとした下町の母という味が出せたのはやはりさすが。

 高英男先生が「待田の顔を見るとストレスを起こす!」と江原にゴネるシーンで「そりゃ近親憎悪っちゅうもんよ!」と思った自分がちょっと笑えた。

1998年06月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16