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今夜は踊ろう


■公開:1967年

■制作:大映

■監督:弓削太郎

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:田宮二郎

■寸評:


 プライベートクラブを経営している田宮二郎は名うてのプレイボーイであり、凄腕の「たまころがし」でもある。昼は人を使ってホットドッグの露天で稼いでいるのだが、最近はこづかい稼ぎが目的のちんぴら・内藤陳たちが頻繁にいやがらせに来るようになった。バンド活動に熱中し学費を使い込んだ学生・荒木一郎が内藤から因縁をつける役を命じられるが、あっさり田宮にしめ上げられて説教される。

 荒木は学資かせぎに田宮の店で働くことになった。その頃、田宮の恋人のマダム・夏桂子から、仲間のママがパトロン・清水将夫に裏切られて若いホステスに店を乗っ取られたので助けてほしいという依頼が舞い込む。田宮は清水の娘・梓英子が自分に興味を持っていることを利用し、家出をしたがっている彼女を荒木に預けて人質として清水を強請る。

 なにも知らされていない荒木は田宮の命令を素直に聞き入れ、梓が退屈しないように歌を歌ってやる。娘の居所を聞き出すためにやくざを送り込んでくるような清水を卑怯な男だと思い込んだ田宮だったが、実際に会ってみると梓のことを本気で心配しているが、妾腹である娘を表立って助けるわけにいかない清水の複雑な家庭事情が分かった。

 店の権利書と梓を交換するために清水の家を訪れた田宮は、素直で若い梓を商売のために利用したことを後悔しつつ、彼女が自分のことを本気で好きにならないように清水の前でわざと冷たくした。絶望した梓は荒木のもとへ家出してしまう。荒木は梓に真剣に告白し、田宮は罪滅ぼしのために二人の結婚を清水に許してもらえるように説得することを約束する。若い二人の姿に刺激されたのか、田宮も夏に結婚を申し込んだ。

 荒木一郎という人はとても面白い。顔はてんでヘナチョコなのになぜか印象に残ってしまう。何にもしていないのに才気がにじみ出ているような、裏でとんでもないことを企んでいそうな、でも顔を見るとなぜかホッとしてしまう。実生活においては見るからに「俺はカッコイイんだ」と自覚している田宮二郎よりもこういう人のほうがモテる。

 タイトルの「今夜は踊ろう」は当時の荒木一郎の大ヒット曲でミリオンセラー。本作品はいわゆる歌謡映画であるので当然ながら荒木はギターを抱えて歌いまくるのだが、それが単なる添え物的な芝居に終わっていないところが良い。プロの役者であり当時は大映の看板スターとして君臨していた田宮二郎とほぼ互角の存在感が荒木にはある。何一つカッコイイことをしないのに、そのフツーさが醸し出すリアルな手応えが荒木一郎の強味である。

 清純な少女を演じる梓英子は成人映画、しかも「縛りモノ」出身なのだがそういう過酷な経歴をまったく感じさせないかわいらしさである。大人の男に憧れてしまう微妙な乙女心を複雑な家庭環境がもたらすアンニュイな雰囲気とからめて、これまた印象に残る。

 トップスターだが根が不器用な田宮二郎と、およそ映画スターとはかけ離れた外見だが才人である荒木一郎が好対象で、互いの価値を高めあっているようなところがある。歌手がやたらと目だつか、映画のオマケに終わるのが歌謡映画の定石だと思うが、これはそのような一連の作品とはあきらかに一線を画していると思う。テーマは軽いが見応え十分のプログラムピクチュア。

1998年06月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16