血を吸う眼 呪いの館 |
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■公開:1971年 ■制作:東宝 ■監督:山本迪夫 ■助監: ■脚本: ■原作: ■撮影: ■音楽: ■美術: ■主演:岸田森 ■寸評: |
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ニッポン吸血鬼映画の金字塔、血を吸うシリーズは3本あるがこれは2本目で、岸田さんは全部出ているわけではなく本作品ともう1本だけである。ちなみに「血を吸う」シリーズ全作完投したのは二見忠男、ある意味、出場の多い岸田森よりピンポイント爆撃の恐怖満点。 で、本作品、東宝ファンにはなつかしい、小さな殺し屋(「殺人狂時代」参照)こと小川安三が出演。 江美早苗と藤田みどりは湖畔に二人きりで住んでいる美人姉妹。画家の藤田は小さい頃、故郷で怪しい屋敷に迷い込んだ時、若い女の死体と唇を鮮血で染めた化け物を見た。彼女はそれがトラウマとなっていて、血の海のような空に浮かぶ不気味な眼をしょっちゅう描いてしまう。藤田の恋人・高橋長英は町の医者で、藤田の悪夢の原因をいつか調べてみたいと思っていた。 ある日、人の好い釣り船屋の親父・高品格のところへ不気味な運送屋・二見忠男が大きな荷物を届けて去っていく。高品が開梱してみると中には真っ白な棺桶が入っていた。「縁起でもない」高品は運送会社に電話をするが相手はそんな荷物は知らないと電話を切った。その夜、棺桶の蓋をおそるおそる高品がずらすと、中は空だった。ホッとした高品の背後に目が血のように光った不気味な男の影が迫る、、。 藤田がかわいがっていた犬が惨殺され、目つきが異様になった(もともとコワイが)高品が藤田を襲った 。藤田は高品の家に連れ込まれるが、偶然訪れた釣客・小川安三に助けられた。その晩、高橋の病院に血の気が失せた若い女・桂木美加が運び込まれる。体にほとんど血が残っていなかった桂木は意識を取り戻すといきなり病院の非常階段から身を投げた。同じ頃、寝付けなかった藤田はふらふらと外を歩いて行く江美を目撃する。 江美は白いマフラーをつけた男と一緒に湖畔に消えるが、藤田が戻ってみるとすでに江美は帰宅していた。江美の様子がおかしいので、不安になった藤田は高橋を家に呼ぶが、急患が入ったと連絡が入り、高橋は車で町に戻る。それは藤田を一人にするための江美の嘘だった。 高橋が去った後、江美は「両親にエコヒイキされていた姉さんが憎かった」と言い藤田を襲う。逃げようとする彼女の前に血の色の眼をした男・岸田森が現われる。間一髪で高橋が戻ってきた。岸田は逃げ、気を失った江美は病院に運ばれる途中「私が死んだら死体をすぐに焼いて」とうわごとを言う。 藤田と高橋は藤田のトラウマが現実であることを知る。屋敷に残されていた外人のおじいさん・大滝秀治の日記によると、大滝の息子・岸田森は曾祖父からの隔世遺伝で不死の吸血鬼になってしまい絶望のあまり恋人を殺してしまった。おまけに岸田に血を吸われた人間は肉体が滅びない限り、吸血鬼として蘇ってしまうのだ。 子供の頃、藤田が目撃した女の死体は岸田に殺された婚約者だった。そこへ岸田が現れ藤田を自分の妻にすると言う。高橋と格闘になった岸田は、死んだはずの大滝に足を取られ、2階から転落し飾ってあった西洋甲冑の槍に体を貫かれて死んだ。 吸血は一種の精神病で自己暗示のせいであると医者の高橋が分析するのは、前作「血を吸う人形」へのアンチテーゼか?それを余裕で否定する岸田さんは続編への布石か?そういうこと考えながら見てはいかんのだが、つい。 それほど岸田ドラキュラの熱演のインパクトはスゴイ。そして人間離れした美貌の江美早苗ドラキュラも印象的である。いや、実のところ達者な演技の岸田さんよりもいい芝居ができない江美さんのほうがよっぽどリアルにコワイ。 姉に劣等感を抱き続けた妹は、岸田の計略であったかもしれないが、自らすすんで吸血鬼になったのかも。美人で才能があって自立していて、イカす恋人までいる姉への復讐のために悪魔に魂を売ったという哀れな女心が感じられる。かすかに残った意識で自分の罪を悔いて「死体を焼いて」と頼むシーンは泣ける。 このようなシナリオの絶妙さゆえに、この映画は単なるモンスター・パニックに終わらず、そこはかとない懐の深さを感じさせるのだ。 岸田のほうも自分の呪われた血脈に絶望して婚約者を殺してしまった事を悩んでいたわけだし(だからって学齢期前の女の子に一目惚れというのはどうかと思うが、ひょっとしてロリコン?)、このへんもなかなか憐憫の情を誘う味付けなのだ。 息子を解放した喜び故か、ラストで大滝の死体は微笑んでいるように見え、なんと涙まで流す。 ホラーや特撮を目的とした映画ならいくらでもあるが、本作品ではそれらはあくまでも手段であり、テーマは肉親の哀惜、吸血鬼の使い方が上手い。 (1998年04月18日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16