「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


怪猫 夜泣き沼


■公開:1957年

■制作:大映

■監督:田坂勝彦

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:勝新太郎

■寸評:


 勝新太郎は当時、白塗りの二枚目として売出されていたが主演しているのはB級の怪談映画などが多かった。

 鍋島藩、藩主・細川俊夫は鼓が自慢で、高名な鼓の名人に師事しており、その腕前は奥義を授けられるところまでに上達していた。忠義な家臣・勝新太郎との腕比べの席上、鼓が破れるアクシデントに見舞われた殿様は、再戦を申し込むが、名人は「もう一度やるまでもなく、勝の方が圧倒的に優れていた」と判定を下してしまう。殿様は悔しさのあまり勝を放逐し、腹黒い家老に「名人の鼻をあかすような策はないか?」と相談する。

 家老の実家はかつて名人とライバルだった鼓の指南役で、今はすっかり落ちぶれていた。復讐に燃える母からいわくつきの鼓を借り受けた家老は早速、殿様に献上する。だが、それは持ち主の身を滅ぼす呪いのかかった鼓だった。名人はその事実を指摘し、家老の本性を殿様に進言するが、その言葉が殿様の逆鱗にふれてしまい、あえなくお手討ちにされてしまう。

 家老は証拠隠滅のために名人の死体を底無し沼に沈めた。その晩から、お城には奇妙な事件が相次ぐ。家老の手先となった腰元が名人の飼い猫に襲われて殺された。殿様は祈祷師に魔除けの着物を作ってもらったため、猫のたたりは直接、家老の身辺に及んだ。おびえた家老は魔除けの着物を盗んで実家に引きこもるが、後を追った猫が家老の母親にとりつき、次に殿様の側室で家老の妹・入江たか子に乗り移り、家老の命を執拗に狙い続ける。

 名人の娘の活躍で殿様は深く反省し、勝の放逐も取り消す。殿様に魔除けの着物を取り上げられた家老は、やけくそになり殿様の命を能舞台の席上で奪おうと画策する。あらかじめ殿様と入れ替わっていた勝と、猫が取りついた入江が協力して家老の腹心たちを全滅させ、ついに陰謀は家老の体とともに底無し沼に沈められた。

 化け猫映画の殆どがキワモノという、まるで隠れキリシタンのようなジャンルに分類される中、本作品は、お家乗っ取り騒動に絡む勧善懲悪的ストーリーで、知的な芸道モノのエピソードあり、ハイセンスなチャンバラありなので、正統派時代劇と呼んでまったく差し支えないと思われる。

 そんなマトモな体裁でありながら、大物化け猫女優・入江たか子も大活躍するのだ。こういう映画を「ゴージャス」と呼ばずに何としよう?入江たか子の至芸がクライマックスまでおあずけなのはちょっと物足りないかもしれないが、今回は、変身前が単なる被害者ではなく、兄貴の手助けをしている悪女であるから、ちょっとヒネた入江の芝居も見られるわけなので、結果的には大満足。

1998年05月17日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16