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スーパーGUNレディ ワニ分署


■公開:1979年

■制作:にっかつ

■監督:曽根中生

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:横山エミー

■寸評:


 収賄事件に関与していたと見られる大企業の重役が高層ホテルから投身自殺を遂げた。彼には男色の趣味があったらしい。当日、同泊していたホモが真相を知っているに違いないと読んだ警視庁秘密捜査課第82分署、通称「ワニ分署」の課長・岸田森は部下の女捜査官・横山エミーに捜査を命じる。

 面構えだけはふてぶてしいがアクションができないエミーに、機動隊から凄腕の助っ人・ジャンボかおるが相棒としてあてがわれる。尾行中のホモ野郎が怪しい二人組の男に交通事故に見せかけて殺された。エミーが二人組の一人を捕まえ、車の中でジャンボが男の顎の骨を手で折ってもう一人を誘き出すオトリにしようとする。

 二人が目を離した隙にあっさりとオトリが射殺され、ホモを殺したもう一人の男が逃げ込んだのはさる右翼団体の事務所であった。夜通し張り込み中だったエミーの車のブレーキが壊された。右翼に金をつかまされた暴走族に追いかけ回された二人が逃げ込んだビルの工事現場でジャンボが負傷。エミーはジャンボを逃がすために敵の手に落ちてしまう。

 監禁されたエミーはラリパッパ・安岡力也に小便をかけられた挙句に複数の男に犯されてシャブ漬けにされる。エミーは黒幕の正体が弁護士・佐藤慶と内閣調査室の室長・今井健二であることを知る。そのころ責任を感じていたジャンボが必死の捜索を続けていた。ジャンボは佐藤の秘書の車を尾行し射殺される寸前だったエミーを夢の島で救出。あわてた佐藤と今井は服役囚・古尾谷雅人内田裕也らを護送車から脱走させ銀行を襲わせる。派手な事件を起こして汚職事件から世間の目をくらまそうという作戦だった。あわよくば事件のどさくさにまぎれてエミーとジャンボを射殺しようとした佐藤であったが、警察官が大嫌いな裕也が暴走したため作戦は失敗する。

 エミーとジャンボは事件の真相を岸田に報告するが、逮捕されたのは殺された重役の上司である社長・河村弘二だけだった。岸田から休暇をもらったエミーとジャンボは交差点で事故を装い佐藤を殺し、続いて今井も薬殺し見事に復讐を果たした。

 なんとまあド左翼な思想を持った映画であろうか。内閣調査室なんて広域暴力団とCIAを足して2で割ったような秘密結社だし(まったく見当違いというわけでもないところがミソ)、悪役として登場するのは右翼の指導者だし、銀行強盗の裕也には元左翼の活動家という設定を与えて銀行を包囲した警官隊に対ってゲバ演説させるし、やりたい放題だなー。

 リアリティを演技の最高峰だと呼ぶのならば、薄汚れたブータレ女を演じた横山エミーは日本の映画史に残る名優と呼ばれますな。実生活を如実に反映したと思われる荒れた肌とぶったるんだ背筋が醸し出すえも言われぬダラシなさ、たまった洗濯物の映像からは悪臭さえ漂ってきそう。かったるそうな表情に、脱ぎっぷりの良さと、すっ裸でゴミの山に横たわり蝿にたかられるのも全然オッケーという根性のアンバランスさが彼女の魅力。こういう私生活と芝居の区別が曖昧な半馬鹿女優って大好きさ。

 相棒は女性キックボクサー(本物)のジャンボかおる。演技に関してはエミーと良い勝負だが彼女には運動神経の良さという長所があった。デブだが走ると結構な距離をちゃんと走れるし、フォームにおいても「バーゲンのオバサン走り風」のエミーとは大違いで肌もエミーよりずっとキレイ。

 篠原とおる原作と言えば「さそりシリーズ」である。映画がシリーズ化される要因というのは概ね2つくらいしかない。第一作目が抜群に面白かったか、主役に役どころがばっちりと合った、という2つである。顧みて本作品は一つの事を見せるために「なにもそこまで」と思えるほどの丹念なディティールの書き込み、お笑い寸止めの戯曲的な演出、トビー門口の職人芸、とことん警察を悪役に回す左翼趣味などの見所(か?)はあるものの、それらすべてをブチ壊すような主演のダルダルぶりにより、思ったとおりシリーズ化されることはなかった。

 低コストをものともせずお色気とバイオレンスが適宜盛り込まれた職人的な作り込みが楽しい、Vシネマの精神的なルーツ。

1998年06月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16