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ジャン有馬の襲撃


■公開:1959年

■制作:大映

■監督:伊藤大輔

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:市川雷蔵

■寸評:


 徳川時代の始めの頃、九州のキリシタン大名、洗礼名ジャン・有馬・市川雷蔵の交易船が、イベリア国の植民地であった半島の珠江で破壊された。理由は日本人居留民の反乱鎮圧のため。居留地の焼きうち、居留民の虐殺だけではあきたらず、イベリアの特使・ジェリー伊藤は賠償金を取りに長崎へやって来る。

 隠居していた徳川家康・三島雅夫はイベリア国の銃器が欲しい。真相究明のために助力を願い出た雷蔵の頼みを表向きは断わった家康だが、有能な長崎奉行・根上淳にひそかに協力させる。イベリア船に幽閉されていた雷蔵の家臣・山村聡の話によると、半島での貿易の利権を掌握したいイベリア国の武官が酒に酔って居留民の娘・弓恵子を襲った時、うっかり国旗を海に落としたのを口実に娘を処刑し居留民の暴動を意図的に誘発したらしい。

 イベリア船には奴隷として日本人や中国人がたくさんこき使われていた。雷蔵は山村を奪回し、領地で布教活動をしていた中国人神父の協力を得て、傲慢な植民地の総督と特使を倒す。イベリア船にいた全ての奴隷を解放してやった後、本格的な国交問題にならぬよう雷蔵は流刑を命じられた。

 雷蔵映画のなかではベスト〜の類にはまったく入ってこないへっぽこな作品。そうりゃそうだ、別に雷蔵が演る必然性なんかまるで感じられないんだから。しかし必然性だけでキャスティングが決定するなんて事はめったにないわけで、客にとってはミスキャストでもそれは会社にとっては当然、と言うことだってあるのだ、特にスタア映画の場合は。

 雷蔵がザビエルみたいなフリフリの襟のついたヘンテコな衣装で出てくる。その代わりと言ってはなんだが、やたらとカッコ良かったのは山村聡。イベリア船を襲撃に向かった雷蔵一行とは別行動をとり、航行速度が遅い軍艦の到着までの時間稼ぎのためにイベリア船にわざと捕まって切腹する。もの珍しい儀式に夢中になった連中は、座礁した船の修理を奴隷に妨害されているのに気が付かず、結局、雷蔵の襲撃は大成功するのだ。

 作戦に協力する中国人神父というのも、実は本国から迫害されて雷蔵がかくまっていたという事情があり、恩返しと虐げられた人々のために、イベリア船の水先案内人を装って船を座礁させる。それを依頼した長崎奉行の根上淳、嫌味で尊大なイベリア人のジェリー伊藤、盲目の中国人少年奴隷を決死の覚悟で救う伊達三郎、と脇の人々の多彩な活躍がやたらと目に付くし、印象深い。

 雷蔵が全然、目立たない「雷蔵映画」ってのも珍しいのではないか。

1998年04月25日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16