「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


まらそん侍


■公開:1956年

■制作:大映

■監督:森一生

■助監:

■脚本:

■原作:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:勝新太郎

■寸評:


 ちょんまげをつけたカレッジもの。

 高崎の小藩では毎年「遠足(とおあし)」というマラソン大会が開催されていた。上位に食い込むと、家宝の「巨大金煙管」で一服できるのである。次席家老の馬鹿息子・大泉滉は殿様・十朱久夫から褒美の煙管を渡され吸うが、その煙管を運んできた首席家老の娘・瑳峨三智子に一目惚れしてしまう。

 2位と3位になった若侍の勝新太郎夏目俊二は藩校へ推薦入学を果たす。二人もまた瑳峨に憧れているのだが、親友同士であるからどうしても相手に遠慮してしまう。

 へなちょこな大泉が瑳峨に求婚した晩、面白くない二人は藩校の仲間・千葉敏郎とともに茶屋でやけ酒をあおる。同じ店に大泉が町の顔役の接待で遊んでいると知った三人は、やくざにいやがらせされている看板娘・三田登喜子を救うにかこつけて、顔役の子分たちと大乱闘になる。

 殿様は瑳峨の結婚相手を「遠足」で決めると発表する。瑳峨は猛反対するが、この大会に乗じて金の煙管を盗んで首席家老に恥をかかせようという陰謀が発覚。流れ者の盗賊・トニー谷から煙管を奪い返した勝は、殿様から「望みのものを取れ」と言われたので、瑳峨を友達の夏目に譲り、自分は三田と所帯を持つことにした。

 いやあ奇麗だ(った)ねえ瑳峨三智子。お母さんにそっくりだし八頭身でスタイルも抜群だ。馬を乗り回す活発なお嬢様だが清々しいお色気もあって素敵。思い込んだら命懸けの三田登喜子もさすが準ミス・ニッポン出身、奇麗だねえ。二人とも積極的で言いたいことを堂々と発言する近代的な女性キャラでありながら、ちっとも小賢しくない、それは恋をしているからなのさ。

 これは時代劇の仮面を被ったカレッジものである。時代考証なんてのは全然関係の無いあちゃらか喜劇。

 一本調子の白塗ではなく、現代娘に猛烈なアタックをかけられてドギマギしたり、煙管泥棒のトニー谷(ソロバン演奏あり)との漫画チックな「おっかけ」などコミカルなタッチも随所にあるので、今回の勝新太郎はとってもキュートだ。藩校の生徒たちの描写も実に現代的である。煙管を担いで走るとき「こりゃあかなりのハンデだなあ」と現代語もポンポンと飛び出るし、門限破りをして宿舎の塀を乗り越えたりするシーンも微笑ましくてイイかんじ。勝の実家が達磨を作っていて(高崎)達磨の顔がいつのまにか女性の顔になっていたりする所もカワイイ。

 この映画のもう一つの見所は、主な出演者が実際に走るマラソン大会のシーンだ。そもそも真面目に走ることを期待されていない大泉はともかく、勝も夏目も見るからにヘロヘロになっているし、体格の良い千葉は移動車の後をかなり長時間、まるで剣道部のランニングの様相だ。しかも台詞を喋りながらであるから、俳優さんは大変ですなあ。

 大泉滉のパントマイム的な動きは今観ても面白いが、トニー谷の芸はちょっとツライかもしれない。それより珍しく善人だった伝令役の伊達三郎がぶっ太い眉毛をつけて目線の鋭さを誤魔化しているのが、やたらと可笑しかったりする。

1998年05月25日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16