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しびれくらげ


■公開:1970年

■制作:大映

■監督:増村保造

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:渥美マリ

■寸評:


 いそぎんちゃく、夜のいそぎんちゃく、でんきくらげ、以上、渥美マリ主演のお色気映画のタイトルである。ちなみにこのシリーズを「軟体動物」シリーズと呼ぶそうだ。映画の題名を考える宣伝部の苦労も並大抵のものではない。

 ファッションモデル・渥美マリは大手企業のやり手社員・川津裕介のヒキでトップモデルになる。渥美は川津と婚約していたが、川津は渥美の肢体を武器に商談を進めるようなタイプの男だった。渥美にはろくでなしの父親・玉川良一がいる。

 玉川が美人局にひっかかりやくざの幹部・草野大悟に強請られる。玉川は渥美に無断で川津のオフィスへ出向いて金を出してもらうが、やくざと関わったことを責められた渥美は川津から婚約を解消されてしまう。草野は渥美をコールガールにしようと目論んで、弟分・田村亮に命じ、玉川を痛めつけて渥美を誘い出させる。

 渥美の境遇に同情して逃がしてやった田村は草野に痛めつけられてしまう。田村を憎からず想い始めていた渥美が田村と協力し、川津に「売春斡旋」の真相を吐かせて、川津の会社の重役・内田朝雄を恐喝する。大金を得た渥美は田村に「組を抜ける詫び金に使って」と言い小切手を渡すのだった。田村は「死ぬ気で足を洗う」と誓って去っていく。

 助監督が監督に昇進すると、ひと山いくらの新人女優の中から一人があてがわれることがよくあった。新人だった頃の渥美を選んだのが「ガメラ・シリーズ」の湯浅憲明監督であったため、彼女のデビュー作は「ガメラ対バイラス」。

 本作品の主役であるの渥美マリはイタリアンテイストの濃いマスクに、男気あふれる硬直芝居、どれをとっても「男らしい女」であるのに加えて、持って生まれたインパクトのある肢体とのマッチングが絶対的な魅力である。かつてイタリア留学したことがある増村監督がこのような素材を見逃すはずがなく、本作品を含めた「くらげ」モノに堂々主役を張らせた。

 とりまく男優が田村亮と川津裕介という「華のない役者」であったために映画全体を包む陰湿なムードはいやがうえにも盛り上がった。コメディリリーフが玉川良一というのも適役である。カラッとしたところがまるでない、現代では(いや当時でも)失笑を買いまくるクドイ芸風がグーである。川津と田村の殴りあいもこれでもかという大流血で、これまたイタリア風味満点。渥美が鬼のように目をつり上げて玉川良一を足で踏み付けるシーンも、以下同文。すべては増村監督の作戦通り。

 公開当時は渥美の肉体に魂をゆさぶられた観客が多かったと思うが、今観ると、主人公の抱く出口のない不安や焦燥感が現代の状況とよく似ていて共感を呼ぶのではないかと思う。ただし、当時のように人生を真面目に考えるようなマインドは減少傾向なので、渥美ほどのマスクと体があれば「もっと楽な人生の選択肢」がたくさんあるのでは?などと思ってしまうのもまた、実感。

1998年05月10日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16