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海賊八幡(ばはん)船


■公開:1960年
■制作:東映
■監督:沢島忠
■助監:
■脚本:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:沢島忠
■寸評:純日本製海賊アクション映画。


 戦国時代、因島を本拠地にしていた村上水軍は「海賊」として恐れられていた。堺の豪商・大河内傳次郎は、ある日、白髭の浮浪者(実は村上水軍)・進藤英太郎が「盲船(軍船)!」と叫ぶのを聞いて取り乱す。大河内傳次郎はかつて村上水軍の重臣であった。ある日、悪臣に唆され主君を惨殺してしまったのだ。主君の断末魔の顔の呪縛に耐えきれず、罪滅ぼしのために彼は悪臣どもの手から若君を連れ去り育てていた。

 進藤たちはお世継ぎである若君・大川橋蔵を奪回しに来たのであった。大河内は実の息子以上の愛情を注いだ橋蔵と妹の小静・桜町弘子を博多へ逃がそうとするが、出航禁止令下でたちまち役人達に見つかり船は丘さとみだけを乗せて出て行った。騒ぎの最中、大河内が役人の放った矢が当たり死んでしまう。

 水軍は力づくで橋蔵を因島へ連れて来たが、大河内を本当の父親だと慕う橋蔵は、水軍の頭領・月形竜之介の説得にも耳を貸さず島を脱出しようとする。琉球出身の娘ジャハナから悪臣達は村上水軍の名をかたり各地で悪逆非道の限りを尽くしていて、彼女の一族も皆殺しになったのだと教えられる。「親の仇を討ちたい」と懇願する彼女の熱意に打たれた橋蔵は、八幡船の頭領になることを決心する。

 偽の水軍に船を壊され、無人島にたどり着いた橋蔵一行を土人が襲撃する。偽の水軍は土人たちにも被害を及ぼしていて、橋蔵達は間違われたのだ。で、この土人のみなさんがこれまたスゴイ。体に墨を塗りたくった日本人(当然だが)が目の回りと唇だけ妙に「ナマ」っぽく、腰ミノつけて槍を持ち、インディアンみたいな雄叫びを上げて走り回るのだ、おまけにその生態はほとんど「人食い人種」。

 あやうく「食われ(?)」そうになった橋蔵一行だが、疑いは敵方の船が近所をうろついていたのを原住民が発見して簡単に晴れる。ついに橋蔵は偽の水軍と真っ向対決する時を迎えた。船を壊されたため橋蔵は部下ともども夜の海を泳いで行く。援護射撃は橋蔵のライバル・岡田英次と仲間の沢村宗之助の船が担当。土人の皆さんは槍を手に橋蔵たちを後方支援。船から海へ飛び込んで逃げ出そうとする敵を船の周りで「立泳ぎ」しながら待ち伏せ、集団でやっつける、まるでピラニアだ。

 橋蔵は見事、両親の仇を討って、妹とも再会を果たし、八幡船の首領として正しい海外交易を行い幸せに暮らしましたとさ、メデタシ、メデタシ。

 実物大の八幡船と盲船、敵味方合わせて4隻が海原を疾走する(作ったんだよ、マジで)。この「ホンモノ」と特撮が実に上手く合成されていて感動するぞ。普通は大砲でドンパチやるところは特撮、と思いきや、水中に爆薬仕掛けて実際にドッカン、ドッカンやるのだ。十数メートルは楽勝で上がっているんじゃないかと思われる水柱、さすが本物、迫力が違う。

 冒険物語には恋がつきもの。岡田英次とジャハナ、男勝りの岡田の妹、寿賀・丘さとみと橋蔵の微笑ましいカップルの恋模様はまさに「お伽話」のセオリーだ。船の上での活劇も敵方がシンドバットみたいな格好なので実に楽しい。素肌に鎧を付けた進藤英太郎、年齢を感じさせない大活躍。

 同時代の橋蔵、錦之助、雷蔵はみな歌舞伎の出身であった。中でも橋蔵は終生、美男子スターとして通した。集団時代劇やリアリズムの台頭で多少、軌道修正めいた作品はあるが、概ねみずみずしい魅力をみなぎらせたまさに「若様、若侍」の代表選手だった。

 橋蔵の童顔は絵本から抜け出たようで、本作品の様な「冒険活劇ロマン」にはぴったりである。リアリズムだけが名優の証拠ではない。こんな荒唐無稽な絵空事を真面目に演じ、客に夢を見させて幸福感を与えてこそ素晴しいと言うものではないのか?。死ぬまで甘い二枚目として通した数少ないスター、大川橋蔵。早逝したからではなく、掛け値なしに戦後日本映画史上、最高の二枚目俳優の一人である。

2004年01月15日

【追記】

2004/01/15:キャストの誤植を修正しました。丘さとみ→桜町弘子、桜町弘子→丘さとみ。(多謝!>おはぎ様)

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2004-01-15