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てなもんやコネクション


■公開:1990年
■制作:レイライン
■監督:山本政志
■助監:
■脚本:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:香港と大阪(環状線の下のほう)
■寸評:大阪(環状線の下のほう)は東南アジアによく似ている。


 返還直前の香港。水上生活をしている一家の長男がクイズで日本旅行をゲット。代理店が大阪の個人商店だったので、ツアコンは一応広東語ができるというそこの家の娘。当然、豪華なホテルなんて全然インチキで宿舎はカプセルホテル、豪華な昼食は通天閣近所の串カツなのだった。

 大阪の釜ヶ崎に住むおばちゃん・鈴木みち子室田日出男(二人一役)に旅行券と金を奪われた長男だったが、地元の人々にカンパを受けてなんとか助かる。おばちゃんの参加で3人になったツアーは東京ディズニーランドを目指すがなぜか浅草の花やしき遊園地に来てしまい、香港旅行に当選してしまう。

 香港で長男を待っているはずだった恋人は地上げ屋・近藤等則の愛人になっていた。家族が住んでいる土地は国際的な資本家グループに狙われていたのだった。彼の家族は母はインチキ露店商、父はインチキ占い師、妹と弟は少年スリ団のリーダーとサブリーダー、末弟はハッカー。誰一人としてまともな職ではないというバイタリティーの塊のような家族であった。

 地上げ屋のいやがらせの数々に、一度は土地の売渡を決めた一家だったが、共産党政権を嫌って大陸から泳いで香港に渡ったが、今では寝たきりだったはずのおじいちゃんの「あきらめるくらいなら、寝たきりになっちまえ!」の一言で俄然奮起。近藤に利用されて捨てられた恋人、ツアコンの娘、おばちゃんも加わって、一家の逆襲が始まった。

 結局は末弟が資本家グループのマザーコンピュータに侵入し彼等を破産させる作戦をとるのだが、せっかく偽造したカードでもセコイ買い物しかできないという、一家の情けなさがイイ。短期間にアシがつかないように資産価値の高い物を買わねばならない、「貴金属、不動産、宝石だけを買え!」と末弟の指令が飛ぶ!

 ついに地上げ屋は負け、資本家グループは撤退する。そして香港は中国に返還された。

 この映画に登場する日本の大部分は大阪の釜ヶ崎というところだ。今から10年ほど前、初めて大阪に行った東京出身で東京在住の私から見たら、そこは出身惑星からして異なるような、まさに異形の人々が跋扈するミステリーゾーンであった。この映画にわずかに登場する東京の風景のひ弱なムードとは段違いである。だからワゴン車の下につかまっているおばちゃんなんて全然、違和感がないのだ。

 大阪の風景と香港のムードが渾然一体となって境目がない。アイデンティティーをアジア的なものにおもねるようなオシャレ映画とは、きっちり一線を画す。この作品にはアジア的なモノを喰って消化してウンコにして見せびらかすような図太さがある。

1998年04月11日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16