北京原人 who are you? |
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■公開:1997年 |
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who are you?ってあんまり丁寧な質問じゃない。「どなたですか?」てか「誰だよ?おまえ!」ってカンジだ、この映画のサブタイトルとしては。 太平洋戦争開戦前夜、北京原人の化石を見た学者・北大路欣也(特別出演)は、軍部を通じて化石を手に入れようとする。ところが化石は開戦のどさくさに紛れて行方不明に。時は流れて西暦2001年、生命科学研究所の総帥・丹波哲郎は、長谷川初範、緒形直人、片岡礼子らに命じ、宇宙空間で北京原人の復活実験を行う。ところが実験の最中に、隕石が衝突、実兼用のポッドは地上へ落下する。 北京で発見されたのだから原人は「中国人」と言い切るジョイ・ウオンは頭の固い、美人キャスター。復活した原人一家・本田博太郎(タカシ)、小松みゆき(ハナコ)、かわいい子役一匹(ケンジ)、らは驚くべき筋力と知識の吸収力をもっていた。北京原人奪回に燃える中国サイドは本田原人と子供原人を北京に連れ帰る。緒形は丹波の反対を押し切って小松原人を連れて後を追う。万里の長城に来た原人は、急にモンゴルを目指して走り出した。 丹波一味、というか日本側の研究所の所長やら、国防省やらの偉い人達が、ヌシもワルよのうの悪代官・亀石征一郎を筆頭に、石橋蓮司、石山雄大、石山律という、東映色の濃い人々で占められる。研究所の警備員が山浦栄ってのも泣かせるじゃあないか。 こんな具合なので、原人と友達になるために接近した緒形と片岡は映画開始早々、パンイチに。子供に付き添ったお母さん達の狼狽をよそに、ボディスーツ着用の小松はともかく、片岡は上半身スッポンポンである。さすが東映だ、お母さんよりもお父さんを大切にするというコンセプトが素晴しいじゃないか(うそ、うそ)。 丹波はシベリアの研究所で極秘に、象とマンモスのあいのこ、その名もずばり「象マンモス」も飼育しているのだ。飼育責任者が佐藤蛾次郎。このマンモスは原人のテレパシーに誘われて、研究所を「ジュマンジ」ばりの特殊効果で破壊し、一路、モンゴル目指して国境突破するのであった。北京原人と蛾次郎、人語を解さない原人と人語を解する猿人、あきらかに笑いをとろうとしているキャスティングなのであった。 100メートルのオリンピック選手・不破弘樹(本物)をブッちぎった走力を誇る原人を、万里の長城から延々と追いかけ、口紅もアイラインも1ミリとて剥げることなく、とても走りにくそうなロングスカートには、野宿までしたのにチリ一つない、ジョイ・ウオンは、本田原人と淡い恋心を通わせるのだった。本田に襲われて胸をもまれただけの片岡礼子に比べて、なんて美味しい役どころであろうか。ギャラの差を、映画に如実に反映するのは東映の身上であるということを再認識した次第。 やはり丹波哲郎大先生あってのこの映画。丹波先生はキャラクターを自分に引き寄せ、リアリティを奪い、いかがわしさを倍増させる魔力をお持ちである。北京原人を飼い馴らし「芸を仕込んでからデビューさせろ」という荒唐無稽なアイデアを、カメラ目線で言い切って、サマになる役者なんぞ丹波先生以外にいやしないのだ。 ヒマラヤ山脈の麓で象マンモスと合流した北京原人一家は、文明と隔絶し自由に暮らす道を選ぶ。できそこないターザンみたいに象マンモスにまたがり去っていく原人達に緒形は泣きながら叫ぶ「ウパーッ!自由に向かって走れー!」馬鹿だ。 (1998年01月31日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16