夫婦 |
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■公開:1953年 |
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「不機嫌な果実」やら「失楽園」ばっか見ていないで、たまにはこういう映画も見ておこう。退屈で眠くなるか、昔の女房は良く働くなあと感心するか。 サラリーマンの上原謙は妻・杉葉子とともに転勤先から東京へ戻ってくる。杉の実家は蒲焼屋で杉の兄・小林桂樹、妹・岡田茉莉子らと両親が暮らしている。とても夫婦が間借りできそうもないので、二人は上原の会社の同僚で、最近、女房と死別したやもめ男・三国連太郎の一軒家に移り住む。三国は杉に「憧れ以上の感情」を抱いているようなので、上原は気が気ではない。杉も結婚6年目にもなって子供もできず、凡庸な夫婦生活に新鮮さを失っていたところだったので、野性味たっぷりの三国の「誘い」を満更でもない様子だ。 倦怠期というのは「疲れ」の一種である。人間は好奇心の動物であるから、一つのことをあまりにも平々凡々と続けていると「飽きて」しまい苦痛になる。 とんぼ返りの出張で疲れて帰宅した上原謙をしり目に、妹や弟、そして三国と談笑していた杉葉子に、カチンと来た上原は怒って家を出てしまう。翌日、今度は杉葉子が毎日のやりくりの大変さや、三国への気づかいを理解しない上原に、気丈に愚痴を垂れて里帰りする。 結婚間近の小林桂樹に「いいかい、女房なんて5年もたてば地金が出るものさ」と夫婦円満の秘訣を諭すフリをして、杉葉子にヨリを戻すように目配せする父・藤原釜足が良い雰囲気だ。夫婦なんてお互い様なんだから、というわけだ。庶民のペーソスを演じさせたらこの人である。杉はこの一言で反省し帰宅する。上原も無言で杉を受け入れ、夫婦は元の鞘に収まる。 結局、上原と杉は引っ越しすることに。今度は杉が「妊娠したらしい」と上原に告げる。金銭的な事情から堕胎をすすめた上原だったが、産婦人科を飛び出して涙を流した杉を見て、「なにがあっても育てよう」と決意する。二人は寄り添うように冬の小道を歩いて行くのであった。独りぼっちになった三国には、会社の女子事務員が前から憧れていたので、こちらもうまく行きそうだ。 人間、疑心暗鬼になると相手の悪気のない、ささいな一言や、箸の上げ下ろし一つで一喜一憂する。この映画はそんな「ちょっとしたこと」の積み重ねででき上がっている。日本映画最大の二枚目スターの上原謙が演じる亭主は、うだつの上がらない地味な性格で、三国のいくぶん図々しい素直さに引け目を感じて嫉妬する。歳の割には(上原謙は当時44歳)ちょっと分別が無いな、とか思うが、これが嫌味に見えないというのが上原謙の素晴しさ。役柄に対する素直さが、わざとらしくなくて気持ちイイ。 杉葉子はバタ臭い顔立ちで、背が高い。口がでかくて顎もとんがっていて(ブスではありませんよ、絶対に)当時の日本美人とは程遠いが、活発で積極的な「妻」像にはぴったり。「夫婦のお互い様」ではない部分、つまり「出産」というカードでいよいよ夫婦の仲は絶望的か!金がないから「堕せ」とは何事か、てめーの責任だろうが!と怒りのマグマが爆発寸前で、やっぱり仲良くなるので、ホッと一安心。気の強い女がたまに見せる「涙」の威力は凄いのである。でも、本当に上原の子供なんだろうか?って、そういう時代の映画じゃないんですな。 (1998年01月31日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16