不毛地帯 |
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■公開:1967年 |
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シベリア抑留から帰国した元大本営作戦参謀・仲代達矢が商社に就職し、次期戦闘機導入計画に絡む汚職事件に巻き込まれる。もちろん当時はそれは汚職ではなく、立派なビジネスなんであるが。政治家、官僚、商社、ジャーナリスト、すべてほとんど実在か、または実在の人物に限りなく近い人々が登場。名前はぼかしてあっても、ピンとくる登場人物ばかりだ。岸首相役と思われる人物の出っ歯には大笑いさせられたが。 仲代は多少の罪悪感もあり戦争の記憶を消そうとするが、渡米先で聞いた「ジャップ!」という一言で翻意する。それだけ戦争の傷跡が生々しい時代の話だ。「戦争はやってはいけない、だが始まったら絶対に勝たねばならん」軍人としては当然なのだが、仲代の戦争はまだ終っていなかったのだ。ライバル商社の凄腕商社マン・田宮二郎は官房長官・小沢栄太郎の抱き込みに成功していた。仲代は戦時中のコネクションを生かし政界の実力者・大滝秀治と組む。 だが時代はすでに名参謀といわれた仲代の常識を超えていた。自分がシベリア抑留と引き替えに救った戦友で今は自衛隊の空将補・丹波哲郎は、小心翼翼たる部下・小松方正が仲代の部下・日下武の指示でもち出したライバル商社の入札価格資料を警視庁に摘発され、小沢栄太郎にあっさりと切り捨てられる。ビジネスと政治の世界では、底抜けに汚らしく厚かましいことが「強さ」とされるのだ。 政治家達の権謀術数に翻弄された丹波は、詫びる仲代を許した帰り道、自殺とも他殺とも事故死とも分からない轢死体で発見され、バケツで処理される。 その葬儀の席にいけしゃあしゃあと現われた小沢は「事故死なら恩給が出る」とほのめかし、遺書らしきものが発見されたら処分するように仲代にささやくに至って、ついに仲代はブチ切れる。次の商戦にもぜひ助力をと社長・山形勲に頼まれた仲代だが、社長の慰留を断わり辞職する。 戦争には負けたが誇りを失わなかった主人公は、戦後、ビジネスには勝利したが親友を失った。そして仕事に没頭するあまり妻・八千草薫や娘・秋吉久美子も犠牲にした。不毛地帯というタイトルが示すように戦中戦後という激動の時代を経て、主人公には何が残ったのだろうか。 いつの時代でも力は弱いところに集中し、大勢を生かすための人柱として、汚職や疑獄の影に必ず犠牲者が生まれる。それは集団が生き残る術であり本能であるように思われる。これを当然と思うようなら人間は犬畜生と同等だということだ。利権にたかる政治家、勝つためには手段を選ばない商社、まさに弱肉強食の不毛の戦争だ、しかもこれには終りがない。 さて山本薩夫監督といえば山本圭。どこにいるのかなーと思っていたら、仲代の会社のアメリカ駐在員でした。ここでも女のことかなんかでトラブって左遷されているんですな、で、仲代達矢にグジグジと愚痴る、懲りませんなあこの人も。 (1998年01月28日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16