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忠臣蔵外伝 四谷怪談


■公開:1994年
■制作:松竹
■監督:深作欣二
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:佐藤浩市
■備考:


 「四谷怪談」の民谷伊右衛門が実は「忠臣蔵」の義士になり損ねていた、というエピソードが核となり、討ち入までのスリリングな顛末と、お岩さんが実は湯女(ゆな)だったという艶っぽい設定も盛り込んだ異色作。てな感じの宣伝文句だったが実際はどうだったかと言うと、好きですよ私は、こういう映画って。

 佐藤浩市の伊右衛門に、高岡早紀のお岩、津川雅彦の大石、渡瀬恒彦の堀部、蟹江敬三の清水一学、荻野目慶子のお梅、渡辺えり子の乳母、で、お梅の父親が石橋蓮司

 高岡のお岩と、荻野目のお梅。「半馬鹿女」対「全馬鹿女」の対決が見所のはずだったが直接対決がなかったのでちょっと残念。渡辺えり子の「白塗」のお多福ババアは夢見そう。とうとう白石加代子を超越する女優が出たな、って感じだ(どういうふうに?)。こんなとんでもない女どもがわんさか登場するので蓮司さんや蟹江の影が(頭髪でなく)薄いのなんの。

 お岩が毒殺されるシーンの生々しさ、というかお下劣加減は注目。大量下血であたり一面、血の海。血糊にこけつまろびつしながら、大暴れする高岡。体力勝負のお岩さんってのがスゴイじゃないか。「仁義なき戦いシリーズ」の川谷拓三的なノリである。こういう実験的な試みというのはたとえ失敗しても、誉めてあげるべきだ。

 現代語ビシバシってもイイ。「なによこれ〜!」と様式美もなにも、今朝、生ごみと一緒に出しちゃいました的なふっきれ方は、中途半端ではないだけに清々しいものがある。

 それだけに、様式美を期待するシーン、たとえば舞踊の場面のトホホぶりが目立つ。荻野目が自分の婚礼の席で舞う「獅子舞」。正月の獅子舞じゃないよ、舞踊のほうね。獅子の頭を持って舞っていると次第に獅子の精に導かれてしまう、という幽玄たっぷりの演目。これを荻野目がドタバタ演るもんだから、彼女の童顔も災いして幼稚園のお遊戯っぽくなっちゃって、獅子頭がまるで「カスタネット」にしか見えないというお粗末さ。

 清水一学の悪計で毒を盛られたお岩は、私怨を晴らすために結果的に義士の味方をする。地吹雪や雷を自在にあやつり、吉良の家臣を惨殺するシーンはSF味満点。でも早紀ちゃんの「ヤーッ!」って掛け声には拍子抜け。もう少し、音効でどうにかすりゃ良かったのにね。

 討ち入後、すでに死んで幽霊になった伊右衛門が琵琶を奏でると、仲間達に音だけ聞こえる というところは、ホロリとさせた。だけどやっぱりテイストは「討ち入」ではなく「出入り」。これは監督の色。伝統的な「忠臣蔵」のサイドストーリーをばっさり切って「四谷怪談」を突っ込んだムリヤリ感は抵抗があるけどやはり「アイデア勝負」ってわけで、こういう映画は是非に認めてあげようではないか。

1998年01月31日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16