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千夜一夜物語


■公開:1969年
■制作:虫プロダクション
■監督:山本暎一
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:青島幸男(声)
■備考:実写とアニメの合成。


 アニメーションの制作現場がデジタル化している現代ではあまり驚くべきことではないが、光学技術でアニメーションと実写を合成する試みはディズニー映画「メリーポピンズ」があり、本作品でも果敢に挑戦している。

 「映画の様な人生」というのは実際、ドラマチックなものだ。本人の努力はとりあえず棚上げするとして、本作品の声の主役のその後の人生の場合は、映画というよりは、まさにこの「漫画のような人生」であるとは言えないだろうか?

 盗賊の財宝をひょんなことから手にいれたバクダッドの貧乏水売・アルディン(声・青島幸男)の波乱に満ちた冒険の数々を描いたファンタジーアニメーション。

 貧乏人が持ちつけない大金を手に入れたらどうするか?まずは色と食に走るのが常道である。この映画は、そういうセックスシーンをかなり大胆に描いている。ダルイ画面に女が変身した無数の蛇がうにょうにょするところなんかは、そのものスバリではないがゆえに、かなりエロっぽい。

 次は名誉。王様と世界の珍しい財宝の比べっこ大会。世界一駿足の馬を得て、空飛ぶ木馬と旗取り競走をしたり、相手方の出してきた「悪い心を見抜く人形」に殺されそうになるくだりは、ハラハラさせて見応えあり。

 財宝勝負に負けたアルディンは王様達を自分の船に招待する。この船は昔、魔法使いの持ち船で、主人の望みをなんでも実現する。彼等が乗船したのを見届けると、アルディンは素早く船を降り「どこの港にも寄らず、永遠に海を彷徨え!」と船に命令する。船は主人の命令を忠実に実行すべく出航していく。船の航海シーンでは、海は実写で船がアニメーションという当時としては画期的な合成処理が施されていた。

 権力の座についたアルディンは、世界一の高さの塔を建設せよと命じる。多くの労働者がかり出され現場は過酷を極めるが、アルディンは「世界一の財宝と権力をもつ自分が世界一の塔を建てるのは当然」と言い張る。やがて糾弾されたアルディンが死刑になりそうになったとき、塔は轟音とともに崩壊するのだった。

 ツキで財宝を手に入れ数々の困難を乗り越えたアルディンは、人の命を弄んだ罰として全てを失った。しかし、したたかなアルディンは、事故のどさくさに紛れてちゃっかり逃亡し、元どおり水売りとしてたくましく生きて行く。

 「クレオパトラ」の声・中山千夏っては異議(大)ありだったけど、青島幸男のひょうひょうとした声色は、主人公アルディンにどんぴしゃ。青島幸男も中山千夏も政治家になった。青島幸男はとうとう都知事になってしまった。東京都庁の建物(は前任者の置土産だけれども)を見上げる度に私はこの映画を思い出す。

1998年01月31日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-08-17