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生き残った弁天様


■公開:1952年
■制作:大映
■監督:久松静児
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:笠置シズ子
■備考:


 笠置シズ子の「ジャングル・ヴギ」は黒澤明監督の「生きる」にも登場する。あちらではドレス姿で踊っていたが、本作品では「ターザン」のジェーン風のセクシーな衣装で、ガニ股で踊りまくり、しかもパンツ丸見え(見たい?)。

 戦地から生還したコメディアン、歌手、浪曲師、奇術師ら七人が「弁天様」をテーマにしたレビューショーで再会する。劇場に殺人犯が逃げ込んだらしいと、刑事・宇佐美惇也が事情聴取にやってくる。ショーの幕が上がる。最初に登場した奇術師が舞台の上で殺される。犯人に特徴が似ている毘沙門天・森繁久弥が疑われるが、彼も襲われて気を失う。大道具係・上田吉二郎が絞殺された。七人の仲間は次々に劇場で殺され、とうとう弁天様・笠置シズ子ただ一人生き残る。

 真犯人は劇場の支配人・見明凡太郎。変装しているのだが、これを偶然に見破ってしまった者から順番に殺す、というなかなかハードなキャラクター。このように、単純に明るくてオメデタイだけではなく、スリラーっぽい味付けがちゃんとしてある。舞台に登場した笠置の頭上に落下する砂袋を真下から撮影したり、箱抜けのマジックを殺人の小道具にしたり、仕掛けはきっちりとポイントを外していない。ヒヤリとさせて、笑わせて、という展開はテンポの遅さを我慢すれば全然オッケー。

 とは言え、歌謡映画のジャンルであるから、ラスト、舞台の天井から落下して犯人が死ぬという、かなり血生臭さいオチを、笠置の「これはスリラーショウでございます!(関西訛)」という一言で強引にふっきるというのが、凄い。死んだはずの登場人物が全員集合して、カーテンコールを盛り上げるエンディングは力まかせの感が否めないが、目くじら立てるほどのこともないので、許す。

 天才的なパントマイマーのエノケンの芸の評価は時代を問わないが、本作品の布袋様・古川ロッパ、寿老人・杉狂児らの「アチャラカ」はやはり見ていて相当ツライ。日常の些末な出来事から笑いをとるこのテの芸人達の輝きは、やはりその時代を共有していないと全然楽しめない。

 圧巻は笠置シズ子の「ジャングルヴギ」。ノドチンコまでスポットライトで焼けそうなくらいの、奥歯の金冠がまぶしい大口は吸い込まれそうだ、ヤだけど。傍若無人の重量戦車の風情。明るくて元気な姿は無条件に人の心をウキウキとさせる、こういうのも時代を超越した芸と言えるかも。

 古川ロッパに「呼び捨てにされる森繁」とか「ドツキ回される森繁」というのも滅多に見られないので貴重だ。当時としてはなんのことはない量産娯楽映画だったのだろうが、このように当時の芸人図鑑としての価値をもって、現代では貴重な遺産となる。古い映画には「時」が奪ってしまう楽しみもあるが、「時」が映画に別の楽しみ方を与えてくれることもあるのだなあと、しみじみ思った。

1998年01月28日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16