仕掛人梅安 |
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■公開:1981年 |
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小林桂樹、緒形拳、渡辺謙、いろんな梅安がいるが私にとっての最高の梅安は田宮二郎。二番目が本作品の錦之介。これ、あくまでも趣味の問題。 鍼灸師の梅安・萬屋錦之介は裏家業ではスゴ腕の殺し屋である。吹き矢を得意とする相棒・中村賀葎雄とコンビで悪党を暗殺している。元締め・藤田進から無理に頼まれた旗本の次男坊・中尾彬の暗殺。その現場を女中・真行寺君枝に見られてしまうが、なぜか彼女は証言しない。事情を知らない浪人・五代高之が真行寺を梅安に紹介する。彼女の弟の治療を依頼しに来たのだ。 上方からやってきた商人・伊丹十三。彼も仕掛人の元締めであった。中尾の暗殺は素行の良くない弟が邪魔になったのでその兄が依頼したもの。兄は口封じのために藤田を衝撃するが失敗。中尾の兄と伊丹は義理の兄弟だった。裏の事情を知る伊丹が錦之介を襲う。その巻添えで真行寺が死ぬ。錦之介と賀葎雄は初めて無報酬の「仕掛け」を実行する。 降旗監督は女を描くのがうまい。それも幸薄い女への愛情の注ぎ方は尋常ではない。本作品の本当の主役は伊丹の妹・小川真由美。もらわれっ子の小川は江戸で料理屋をやっている。小川は幼いころから伊丹のおもちゃであり、伊丹の出世のために、人身御供として「使われる」こともしばしば。伊丹の色狂いと、精神のバランスが少々イカレた小川。二人の刹那的なカラミが絶妙だ。 錦之介のうまさは相変わらずで、特に今回は何もしていない、そこが良い。有名な原作で、客に確固たる(各々の)イメージが確立している場合には、雄弁な芝居は不向きだ。錦之介と宮下順子、小川真由美との恋愛もストーリーのキーポイントである。錦之介はだいぶん十が経っているから、みずみずしい恋愛シーンというのは無理だったけれども、まるで蛸の吸盤のような濃密な大人の恋模様を情感たっぷりに見せてくれた。ただ、ヤりゃあイイってもんじゃないのだよ、大人の恋は。 錦之介は、屋形船に旗本と伊丹を孤立させ、橋の上から急襲して倒す。小川は錦之介にすがり「ありがとう」と言う。錦之介は万感の思いで小川の首に針を打ち込む。全ての因果から自分を解き放つためには死ぬしかなかった小川。賀葎雄に小川の最期の言葉を問われた錦之介は「ひとでなし」だったと答える。それは伊丹に対する小川の思いか、それとも錦之介の後悔の証か、と、余韻を残して映画は終わる。 錦之介と伊丹十三は奇しくも同じ年に同じ歳で逝った。大スター、独立、倒産、闘病と晩年になるほど過酷だった前者と、役者を辞してから名監督といわれた後者の共演。役を素通りして人物に各々の実人生を重ねて観てしまうので、この二人の共演に対する思い入れは深い、今となっては。 (1998年01月09日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16