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顔役暁に死す


■公開:1961
■制作:東宝
■監督:岡本喜八
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:加山雄三
■備考:後家さんが妙に色っぽいのは困りもの。


 アラスカで森林開発の仕事をしていた加山雄三は、父が市長を務めていた故郷へ帰る。町には古い地廻りがいたが新興やくざに押さえられていた。地廻りの二代目・田中邦衛は幹部・中丸忠雄とともに主権奪回を目指していた。

 加山は父が暗殺された事を知ると、さっそく実家へ赴く。そこには武骨な父親に似つかわしくない美しい後妻・島崎雪子がいた。加山のところへ暗殺事件の証拠を売りたいという電話がかかる。加山が取り引き場所に行くと、中丸が手下を連れて現われる。さらに新興やくざ・平田昭彦(様)に雇われているヒットマン・中谷一郎も登場する。しかし両者とも加山の取り引き相手ではなかった。

 二代目の市長が柳永二郎なので、ほとんどの観客はピンとくるのであるが、それはさておき。抗争に躍起になっているやくざの間を浮幽霊のように行き来する情報屋・ミッキーカーチスが最高である。「肋骨が三本ない」だのなんだのと、どうでもいいような事をつぶやきながら、両方から金を巻上げる。監督の愛情を一身に受けたうらやましい役どころだ。

 主人公の活躍を際立たせている悪役チーム。青大将になる前の田中邦衛は大体が不健康で陰気なやくざあたりが定番で悪役が多かった。そこにキザで尊大で知能犯で残酷な手口も全然オッケーの中丸忠雄あたりがからんでくると、もう無敵。ちなみに中丸より田中のほうが年長なのである、そうは見えなくても念のため。

 加山雄三のボンボン風味は岡本喜八の映画だとなぜか能天気に見えないから不思議。清々しくてカラッとしていて、日本的な陰湿さとは無縁の雰囲気は、いかなるハッタリ芝居も喉ごし爽やかだ。おまけにモテまくる割にはいやらしい大人のセックスの匂いがまったくしないというのも凄い。やはり「育ちの良さ」であろうか。今回も濃厚なお色気の島崎雪子に対してキュートなヒーローに終始した。

 中谷一郎はどう考えてもあのルックスでは悪役なんか演れないので、今回も加山になんとなく肩入れする。遊園地での壮絶なドンパチ合戦で中丸と相撃ちになった中谷は、市長暗殺を命令されて現場へ行ったが、実は先に来ていた人物がいてそれが犯人だと加山に告げる。証拠の品というのは犯人の指紋が焼き付いた薬莢だったのだ。犯人は柳永二郎だった。柳は加山を殺そうとするが、島崎が柳を撃った。

 真犯人の証拠をめぐって二転三転しているようであるが、実はあまりシリアスな謎ときは存在しない。結構、最初っからバレバレだ。

 風来坊がかっこよく事件を解決してまたかっこよく去っていくという西部劇みたいな映画。

1998年01月26日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16