暗黒街の顔役 |
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■公開:1959年 |
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やくざの幹部・鶴田浩二の弟・宝田明は、組長・河津清三郎の命令で殺人事件に関与したが、ラーメン屋の女給に顔を見られてしまう。宝田は足を洗って恋人・柳川慶子と一緒になろうとしていた。鶴田は兄貴分・平田昭彦(様)の協力で、なんとか宝田を逃がそうとするが、河津はそれを許さず、腹心・田中春男に命じ足の不自由な鶴田の子供を誘拐する。 田中は言葉巧みに医療施設から息子を連れ出し、人質にとり鶴田に借金でがんじがらめにした修理工場へ宝田を連れて来るように命じる。やさしい施設の教師・白川由美が心配して訪ねてくるが、鶴田には田中が差し向けた殺し屋・佐藤允が付きまとう。河津の情婦であるが鶴田に協力的なマダム・草笛光子が息子を助けた。鶴田は白川に息子を預け、宝田を連れて修理工場へ向かった。 「独立愚連隊」でブレイクする寸前の佐藤允が断然素晴しい。佐藤は河津に雇われた鶴田の監視役でありながら、次第に鶴田の味方になる。鶴田が息子のために立ち寄ったおもちゃ屋のショウウインドーを覗き込んだときの、佐藤允のはにかんだような、切ないような、その表情は母性本能をダイレクトに刺激するものであった。ワンシーンだけで名作になってしまう映画というのがあるが、私にとってはまさにこのシーンがそれだった。 主演の鶴田浩二はどうか。息子誘拐の知らせにハラハラと心は千々に乱れるわけだが、これがまた、実にクサい芝居。まだ兄貴分の平田昭彦(実に納得のできないキャスティングだ)がいるから遠慮しているんだが、岡本喜八監督のワールドでは、どう考えても浮いてしまう、はずだった。 ところが、だ、この作品では妙に鶴田浩二、ハマリまくっているんである。なぜか?それは本作品の音楽が伊福部昭だったからだ。 岡本喜八監督といえば佐藤勝というのが後年は定番であり、それに慣れているもんだから、本作の伊福部先生の叙情的な音楽には、最初はかなり違和感があった。しかし、そのお陰様で鶴田の湿っぽい芝居が映えた。伊福部先生の音楽が、鶴田の演技と、ともすれば危なっかしい宝田の、かなり無理がある「純情芝居」のクサさと相まってこの「兄弟愛の物語」を成立させていると言っても過言ではないのでは? モダンでアメリカナイズされたギャングの河津清三郎と平田昭彦(様)はアメリカのテレビドラマから抜け出たようなオシャレな風情。ウエスタンに出てくるバーのシーンにピッタリ。絶命寸前の鶴田に寄り添った草笛光子の大人のお色気も、今や貴重である。 そして忘れてはならないのが、修理工場のショボクレ親父・三船敏郎。ずーっとやられっぱなしだったが、最後はドリル一丁と、ドリルよりはるかにオッカナイ怒鳴り声でギャングを追い払い、後年、三船プロダクションの主軸となった夏木陽介に頭を殴られても、憤然と、3倍くらいの力でドツキ返していた。この時期の三船にこういうはじっこの役はかなり珍しいのだが、「独立愚連隊」のクルクルパー隊長に継ぐ、キワモノ出演には拍手をせずにはおれない。 チンピラのミッキーカーチスや夏木陽介、刑事の中丸忠雄などはまだ脇のほうであるが、ちゃんと印象に残る。ふーんこの頃はマトモな刑事さんだったのにねー。 岡本組のドンパチ系レギュラーメンバーのルーツ的な作品。 (1998年01月27日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16