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女子学園 悪い遊び


■公開:1970年

■制作:日活

■監督:江崎実生

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:夏純子

■寸評:


 おまえらいったいいくつなんだよっ!とでも叫びたくなる「若大将」シリーズよりもさらに、その年齢のギャップをまったりと楽しめるのが本作品。

 川崎市(神奈川県)にある「白薔薇女学園」の校長は小松方正。この事からも分かるように、この学校のガラは悪い。ある日、中等部の女(スケ)番グループが学園祭のために集めた資金を、こともあろうに教師がねこばばしてホステスと逃亡。そこへ転校してきたのがクールビューティーな夏純子。彼女はさっそく女番長と丁半博打で対決し勝利する。さらに教師の江守徹をどっちが先にモノにするかというゲームに挑戦する。

 グループの仲間が妊娠し、相手は教師の江守徹だと告白する。学校側は事件を隠滅するため、女番たちを退学にしようとするが、夏純子たちはピケを張りストライキを決行。ついに学校側はねこばば事件の事実を認め、退学処分を取り消す。事なかれ主義の校長が急に心変わりしたことを不審に思った夏純子が江守を問い詰める。江守は自分の退職をバーターに学校と取り引きしていた。夏は田舎の学校に赴任するという江守の後を追おうとする。

 この映画に出てくる「女子中学生」くらいリアリティが欠如したキャラクターはない。誰がどう見たってキャバクラのおねーちゃんたちにしか見えやしない。夏純子、当時二十一歳。白い短パンにお下げ髪がまぶしい限りである。乳臭い今どきの小娘とは違い、その全身から立ち上る濃い色気は二十そこそこという実年齢に鑑みても仰天する。

 ズベ公達をやさしくサポートするのは、ストリップ劇場の照明係(イイ設定だ)を本業とするヤクザ・岡崎二郎と弟分の菅野直之(「大鉄人ワンセブン」の怪力・海野隊員)のコンビ。賭けの代償に「下の毛を剃る」というめくるめくような展開を見せた女番長と夏純子の勝負。負けた女番長の下着を剥いて「まだ生えちゃ(い)ねえってか?」と、呆れる岡崎と菅野のばかばかしさになんとも味わい深いものがある。「やはり彼女達はまだ中学生だったのね」と、観客に納得させる大切なシーンであった。

 夏純子が実はプチブルの孤独なお嬢さんだったという、とってつけたような設定で、別居している母親が大年増ホステスの宮城千賀子ってのが凄すぎる。それに江守のことが大好きな同僚の教師・松原智恵子がズベ公軍団に襲われそうなシーンもあったりなんかして、、、。いったいこの映画を作った人は何考えてたんだろうか。

 何からなにまで非常識なこの映画を、更にわけわからなくしている元凶が、日本新劇界のカール・ラガーフェルド(デザインセンスもさる事ながら、その商才と傲慢そうな態度が有名なデザイナー。)と呼ばれる江守徹のキャスティングである。なんで江守が夏純子に惚れられるんだ?なんで松原のチー子ちゃんにまで結婚を迫られるんだ?日活だろ?同じ新劇出身の地井武男がいるじゃないか(強引なオチ)!

 夏純子たちは仲間の堕胎費用を工面するために万引きやサギを平然とやりまくるのであるが、その美貌を生かせばもっと良い稼ぎ口がありそうなものだ(特に川崎なら)と余計な心配までさせてしまうほど素敵な夏純子が、江守の胸に飛び込んみ、あまつさえ「泣く」という展開が断じて納得できないわけだ、私としては。あんな頭でっかち(内面、外面ともに)野郎のどこがいいんだ!と叫びたくなるわけだ、私としては。

 しかし、このようなわだかまりは、最後に飛ばされた江守の替わりにやってくる新任教師の登場で解決する。江守徹の後を追うかに見えた夏純子は、校門で擦れ違った風来坊のような、ちょっと不良っぽい新任教師の争奪戦を、元番長とくりひろげるために学校に残るのだ。

 なぜ?心底愛していたはずの江守をそんなに簡単に諦めた理由とは?その新任教師が藤竜也(サングラス、革ジャン付)だったからである。大納得!エンディングは生徒達のイキイキとしたバレーボールのシーンなのであった。ここだけ見ればこの作品が間違いなく「学園青春モノ」であることが理解できる。お色気学園映画の金字塔「ハレンチ学園」はこの年、日活で映画化されたのだった。

1997年11月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2007-11-23