もののけ姫 |
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■公開:1997年 ■制作:スタジオジブリ、東宝 ■監督:宮崎駿 ■助監: ■脚本: ■撮影: ■音楽: ■美術: ■主演:松田洋治(声) ■寸評: |
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日本映画の興業配収記録を実に「南極物語」以来、更新した本作品は、製作者の引退宣言まで営業に利用した宣伝活動にも、おおいにその成果は助けられていたと言っていい。なぜなら、主題テーマの一方をすんなり知りきれトンボにしてしまったり、時代劇としてのエンタテイメント性が低調で娯楽映画としてはなんとも物足りないこの作品が品質の点において、高く評価されるべき点があまりにも見当たらないからである。 古代の日本。村を襲った猪のタタリ神。その原因を探るべく旅に出た青年・アシタカ・松田洋治(声)と山犬に育てられた「もののけ姫」と呼ばれる少女・サン・石田ゆり子(声)、それに製鉄工場を守ろうとする女性・エボシ・田中裕子(声)の三つの人生が、シシ神の池で出会い、戦い、和解します。 この映画のテーマは「文明の罪」です。 巨大なダンゴ虫や、呪いの石や、ぽんぽこ狸でまったりと、繰り返し登場する「地球代表」が今回は「もののけ」なのですね、これはカヴァーする範囲が広いですから、なるほど「総集編」と納得できます。 一見すると「人間のエゴが生んだ環境破壊による人類の終末」に「人知を超えた力で立ち向かう」という大なり小なりこの監督が劇場公開用映画「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」で描いてきたテーマが時代劇に持ち越されただけのように見えるんですけど、この映画のテーマはもう一つあります。 それは「差別」です。 エボシの命令で鉄砲作っているのは、目だけ出した特異な覆面を被っている人たち、彼らは平安時代に八坂神社に使えていた最下層の隷属民、死体の埋葬などに従事していた犬神人(いぬじにん)という被差別階級の人たちがモデルと思われます。たたら場で働いているのは女性ばかりです。つまりこの映画は、犬神人、業病患者(ハンセン氏病)、女性という社会から差別されたり低い身分にされていた人たちの姿をかなり忠実に、モロに描いているわけです。 ハンセン氏病と思われる人たちと犬神人がごっちゃになってるんですけどね、ビジュアル的に。 これはちょっとアニメではかなり冒険的な試みなんじゃないですかね?もちろんそのスジの啓蒙映画は除いて、いわゆる商業映画としてロードショー公開される作品において、ですが。 問題の解決手段として、にしても十分には解決しないんですけど、「人知を超えた神秘なるモノの力」に頼らなければならないというオチはいつものことです。 それゆえ、この映画を観た後で、なんとも言えない徒労感に襲われるのですね。「人間はエゴを捨てて自然の法則を尊重し少し我慢することを覚えましょう」だけならよかったんですが、そこへひょっこりと「差別問題」が顔を出してそっちがほったらかしのまま終わるんで、全然スッキリしないんですね。 もちろんデリケートな問題ですから、なにせ相手が動物やフェアリーじゃないですから、ツッコめないんでしょうけど、それにしても歴史観を忠実に再現しようとする手段ならそういう「アブナイ」ものは登場させないほうが良かったんじゃないかと思います。アブナイってのは現実の「人」じゃないですよ、そういうテーマを想起させる符号としてのキャラクター、です。 黒澤明監督の「隠し砦の三悪人」「七人の侍」から頂いた場面はかなりありますが、やはりアニメーションで血がリアルに吹き出るのはイヤなものです。子供向けだろうが大人向けだろうが。 少なくとも私がアニメーション映画に求めていたモノ「わかりやすさ」「美しいもの」はこの作品には皆無でした。が、一つだけ。映画の冒頭、たたり神になってしまったイノシシの声は佐藤允だったのでそれはクレジット観るまで分かりませんでしたが、ちょっとビックリ&狂喜。 (1997年11月26日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16