ごろつき犬

■公開：1965年

■制作：大映

■監督：村野鐡太郎

■助監：

■脚本：

■撮影：

■音楽：

■美術：

■主演：田宮二郎

■寸評：

　バイクで飛ばしていた（住所不定無職のくせにどうやって免許とったんだよ？）鴨井大介・田宮二郎は事故ってしまい、高級外車の女・水谷良重に助けられる。彼女からやくざを二人消してほしいと依頼された鴨井は温泉宿で、珍しい拳銃をもっていた男・根上淳とすれ違う。大阪に戻った鴨井は大手企業の機密に関与していた管理職の暗殺計画を知る。根上と子分・成田三樹夫がヒットマン・山下恂一郎を使って、汚職の主犯である社長・宮口精二を恐喝していた。

　山下には江波杏子という恋人がいて、二人で逃げようとしたところを山下が射殺される。しょぼくれ刑事・天知茂から水谷と根上、成田の関係を知った鴨井の目前で成田が殺される。鴨井は黒幕が根上であることを突き止めて倒す。

　いつもながらのスピーディーな展開と「女より拳銃が好き」な鴨井としょぼくれの打々発止のかけあいが絶好調だ。今回のゲストの目玉は中田ダイマル・ラケット。江波の父親であるダイマルが、グレた娘を心配していながらも素直になれない昔気質の親父を好演、というか地のまんまで演じる。ガマガエルみたいな親父二人と田宮二郎が混在する画面はかなり笑える。

　根上、成田、天知、田宮、山下、とまあイイ男をずらりと揃えて、各々に冷血、下衆、コミカル、キザ、純情、というキャラクターを与えているが、二枚目っつうのはいろいろと流用が効くもんだね。逆はないからね。特に大映は芝居はともかくイイオトコ系が多かった。

　田宮二郎の曲撃ちやガンさばきかなり危なっかしい面もあるが、よく練習したねえ、という努力の跡が偲ばれて良い。観客のために努力するのは素晴しいことである。それに田宮二郎だから多少のことは目をつむるね、私は。

　ラストの銃撃戦が終わったころにタイミング良く現われた警官隊。「えらいこっちゃ」と逃げ出そうとする鴨井だがいきなり「鴨井警部どの」と呼ばれて面喰らう。撃たれた相手が木の葉のように舞っているのに「みね打ちや」と言い張る鴨井、それで納得すンなよしょぼくれ刑事！拳銃不法所持を見逃した上に、傷害罪もお目こぼししてあげちゃう。そこまでやっていいのか？民主警察が。

　今回のしょぼくれは演技派だ。協力を渋る鴨井に「俺は胸を病んでいてもう長くない」とウソをつく。天知の陰鬱な（いつもの）顔で打ち明けられた鴨井はホイホイとモンタージュ作成に協力するのである。このシリーズはやはり天知のしょぼくれ刑事あっての鴨井であることを改めて納得。

　神出鬼没の本シリーズ常連、坂本スミ子も元気いっぱいのやり放題。宿の女中さん役で、布団部屋で田宮にオッパイ触らせて大喜び。こういう向上心とは無縁の生き方って憧れるなあ。

（1997年12月09日）

【追記】

※本文中敬称略

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