馬鹿が戦車(タンク)でやって来る |
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■公開:1964年 ■制作:松竹 ■監督:山田洋次 ■製作: ■脚本: ■原作: ■撮影: ■音楽: ■美術: ■特撮: ■主演:ハナ肇 ■寸評: |
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オープニングの松竹のマークと釣船の谷啓を見て「お、『釣バカ』か?」などと思った人は数知れず(いない、いない)。 サラリーマン風の松村達雄と谷啓が釣りをしている。アタリが悪いので場所を変えることになった。途中、船頭・東野英治郎は「タンク棚」と呼ばれる穴場にまつわる、数年前に起きた不思議な事件を教えてくれた。 山奥の村の住人はがめつくて、頑固で、人のうわさ話しが大好きな人達。初めて訪れたものは皆、辟易するのだという。風変わりな村のなかでもとりわけヘンなのが、村はずれのハナ肇のあばら家。耳の悪い母・飯田蝶子、頭の足りない弟・犬塚弘とともに暮らしているハナ一家は、地主・花沢徳衛と土地の境界線でもめていた。 そんなヘンな人々のなかで数少ないフツーの人間は新任の駐在・穂積隆信それに花沢の血縁者とはとうてい信じられない病気がちな一人娘・岩下志麻、くらいなものだった。戦争中、少年戦車兵だったハナの家の納屋には、なんと戦車(タンク)が隠してあるのだった。 岩下志麻の快気祝の席に出たハナは格違いを馬鹿にされ大暴れする。そして逮捕されたハナは留置場へ。その間に村の顔役の菅井一郎が、飯田蝶子に盲判を押させて土地を巻上げようとする。出所してきたハナの怒りが爆発し、タンクに乗って村の有力者の屋敷を破壊する。だがその最中に火の見櫓に上った犬塚が転落して死んでしまう。 翌朝、村に残っていた戦車の轍。それを追っていく村人達。途中、ハナが医者・高橋幸治に犬塚を看てくれと頼んだが死体なので断わられたという事実を知った村人は、なにかに駆り立てられるように走る、走る。戦車は海辺の村に向かっていた。とうとう彼等は、砂浜に残った轍が海に吸い込まれているところへたどり着く。ハナ肇の行方は?生死は?船頭の話はそこで終わる。 この映画は、脇役が良い味わい。日本在来種の百姓を演じるのは常田富士男、天草四郎、多武謙三。多武はクレージーキャッツの映画で狂言回し役が多かったが、この映画でもタンクに追いかけ回される。床屋が渡辺篤(「建物評論家」の渡辺篤史ではない)で、ハナの頭を面白半分にチックでパチパチに固めた罪(?)で店を失うハメに。田舎の小ボスの菅井と花沢もハマリすぎて怖いほど。 ラストの轍が海に消えているシーンのシュールさはどうだ。まるで理屈っぽくて説明不足なフランス映画のようではないか。今では見ることができない底抜けにきれいな海や山の景色が「日本的でない」と感じさせるのかもしれないのだが。 山田洋次ってこんな映画「も」撮ってたんだ!、という認識は誤りである。こんな映画「ばっか」撮ってたんだね昔から、が正しい。他人を貶めて自分が安心するという差別の構造や、純粋な人間が生きることの難しさ、その悔しさがいつも根底にあるのだと思う。それを、ここまで大げさに、バカバカしく、あっけらかんと描けるというのがこの監督の凄いところなのだ。 (1997年10月11日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16