「日本映画の感想文」のトップページへ

「サイトマップ」へ


激殺!邪道拳


■公開:1977年

■制作:シネシンク、東映

■監督:野田幸男

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:千葉真一

■寸評:


 「激殺」ってなによ?「北斗の拳」の「ひでぶ」かいっ!?

 タイ国で内乱の最中に両親を殺された千葉真一は武道を修行して強くなる。ある日、師匠が彼の目前で殺された。殺したのは兄弟弟子。千葉は兄弟弟子と対決するがあっさり蹴飛ばされてダウン。やられ際に聞いた「師匠は麻薬組織の大ボス」という言葉が信じられない千葉は、師匠の仇討ちを誓うのだった。

 お話し変わって、、、。

 若い運び屋は麻薬組織のボスに狙われるが、ボスの手下・山下タダシ(実は麻薬捜査官)に救われる。そして、な、なんと山下とその若い運び屋は、全然似ていない兄弟だったという、ものすごく強引なドラマが展開。ボスに拷問されていた山下を救いに赴いた運び屋が殺され、山下は職務を超越したリベンジャーになる。

 千葉ちゃんはその間何をしていたのかというと、謎の遺跡でとんでもない修行をしていたのだった。「骨を砕かれ神経がズタボロ」になったはずなのに、機織り娘・志穂美悦子の「電気アンマ治療」で奇跡の復活。「こりゃええわい」と思った千葉ちゃんは健康な筋肉にも電流を流してメキメキパワーアップ。その代償として彼は麻薬中毒になるのだった。

 電気アンマのセットがSMの女王様みたいなシロモノなので大笑い。黒い革のパンツとブラジャーに電極つけて、ピストン堀口も真っ青のハイスピード(早回し)拳法を会得する千葉ちゃん。なんだかものすごく情けない絵なのだが、あまりにも真面目に取り組んでいるので、その迫力は問答無用である、というか、アブナすぎて見る者を緊張させずにはおかない。

 千葉ちゃんを襲いに来る敵の人達がこれまた怖い。ゾンビのように現われて、突然、猿のように暴れ始めたり、いきなり集団でムエタイの「戦いの踊り」をしたりするのだ。千葉ちゃんをはじめとして、登場人物の一人残らずが、何がしかの薬物を使用しているとしか思えない。いくらマジックマッシュルームの本場とはいえ、いやはや、実に恐ろしい。

 悪の兄弟弟子ってのがこれまた、グループサウンズのボーカルみたいな童顔。こういうところは香港映画のノリだよね。とりあえず役者は武道ができることが優先されるから、マスクは二の次。歳くった設定でもヘアスタイルがそのままで銀髪になっただけというお手軽さ。彼は千葉ちゃんを色々な動物の拳法で苦しめるが、千葉ちゃんが変態の誹り(?)にもめげず、難行苦行の末あみだした必殺の電撃連打を顔面と腹に食らって、大流血の後、壮絶な最期を迎える。

 しかし、麻薬におかされた千葉ちゃんはすでに瀕死の状態。やっと倒した兄弟弟子を見つめながら「師匠、仇はとりましたよ〜」と満足して死ねるかと思ったら、いきなり目の前に死んだはずの師匠が、ひょっこり現われて、麻薬の密売犯として連行されるのだった。ひょえ〜っ!と呆気にとられる千葉ちゃんは薄れ行く意識のなかで「俺の青春を返せ!」とでも叫んでいたに違いない。

 千葉ちゃんが海外で制作した、乾坤一擲のカラテ映画。努力は必ずしも報われるとは限らないという現実を、まざまざと見せつけられる事だろう、いろんな意味で。だけど、千葉ちゃんの空手アクションは、日本人では空前絶後の芸術品。そこんところはマジで凄いからしっかりと見ておこう。後は、ま、適当に流してくださいね。

1997年11月19日

【追記】

※本文中敬称略


このページのてっぺんへ

■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16