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怪猫 有馬御殿


■公開:1953年

■制作:大映

■監督:荒井良平

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:入江たか子

■寸評:


 入江たか子の化け猫映画第二作目。

 有馬の殿様の古参の側室は新参の入江たか子に殿様の寵愛が移ってしまったのが面白くない。入江の飼っていた猫はそんなイジワルな側室に意趣返し!とばかりに鯛のお頭付を失敬したりするカワイイ奴。怒った側室は入江に裸踊りをさせようとするが殿様が止めた(あたりまえだ)。

 嫉妬に狂った古株はさらに侍女に命じて武芸大会で入江に怪我をさせたり、頭にろうそくおっ立てて丑の刻参りまでやらかす。おまえは「愛の陽炎(by 伊藤麻衣子)」かい!あまつさえ、入江をハメて「丑の刻参りをして私を呪い殺そうとしただろう」とかなんとか言いがかりをつけるのであった。

 暇乞いをしようと決心した入江に止しゃあいいのに殿様の弟が「そんなイジメに負けちゃいけない、強く生きなさい」なんて学校の先生みたいな役立たずのアドバイスをしたものだから側室のジェラシーは沸騰点を超過!ついに入江は自害に見せかけて殺されてしまう。

 だが入江は死ぬ間際、荷担した女中の指を噛み切っていた!その血を舐めた猫の復讐が始まる。

 指の欠けた女中を殺し火の見櫓に吊す。今回の化け猫はとってもパワフル。ひっかくだけでは飽きたらず、側室派の女中共に再び操り人形のように(名物!ねこじゃらし)パフォーマンスを散々させて首を噛み千切ってしまうのだ。

 だがそんなスプラッターな殺害シーンにおける化け猫のメイクはちょっとお茶目。それは耳だ!日本髪を結った横っちょから可愛いお耳が左右にピョコン!ピョコン!とまるで玩具のように動くのだ。おっかない顔の入江(普段が奇蹟のように美しいのでその落差は賞賛に値する)たか子の熱演も見事だが、飛び上がるたびに跳ねるお耳がラブリィー。

 入江を刺し殺した実行犯の侍女の前に現われた化け猫は、さっき自分で殺した女中の生首を空中浮遊をさせて侍女追い詰める。そして次々に女中のゾンビ軍団が現われよってたかって侍女を殺害する。屏風がくるりと一人でにひっくり返るシーンなど茶目っ気たっぷり。

 化け猫は、憎むべき側室を追って突進!突進!また突進!がんばれ、化け猫、ゴールは近い。ところが化け猫は侍達との立ち回りの挙句、殿様によってとうとう首をはねられてしまう。ところがどっこい勝負はこれから。入江の生首が目を見開いたまま空を飛び、戸障子を突き破り、屋敷の奥に逃げたお局様の首筋にガブリと一撃、ついに復讐は遂げられたのだった。

 大映の美術力、特に今回は大奥の女性達の絢爛たる衣装、それに調度の数々が昨今のテレビ時代劇とは比較にならないほど素晴しい。ちゃんと天井が映るもんなあ、ってそんなところで感心してたら当時のスタッフのかたがたに失礼というもの。

 日本髪を結った女の生首が二つ、グーッと迫ってくるところは作り物だと分かっていてもなかなか薄き味の悪いものがありました。

 絶世の美人女優と、美しいセットと衣装、それにお茶目なクリーチャー。やっぱり化け猫映画は面白い。

1997年08月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16