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怪猫 岡崎騒動


■公開:1954年

■制作:大映

■監督:加戸敏

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:入江たか子

■寸評:


 入江たか子の「化け猫映画」を見たことがないという人は人生においてかなり損をしていると思います。華族の家柄であり、戦前のトップスターから戦後はさる大監督に主役を降ろされ急転直下、化け猫女優として大ヒット、一時引退状態から黒澤映画にゲスト出演、映画を超えた女優・入江たか子。美貌が一転、髪をおどろに振り乱し目の玉をひんむいてクワッ!とカメラに突進!踊るわ、跳ねるわ、空飛ぶわ!

 「怪猫岡崎騒動」は入江たか子にとって3本目の化け猫映画。

 岡崎家の水野刑部は妾腹ゆえ家督を継げない。城主である兄は刑部を大切にしていますが、代々伝わる秘宝の観音像をめぐって骨董好きの刑部は兄を逆恨みする。おまけに刑部は自分には恋人・霧立のぼるがありながら兄の正室・入江たか子にホの字。

 白昼堂々、入江を襲った刑部はあっさりヒジテツ食らって赤っ恥。それに同情した刑部の家来が「復讐しましょう」と煽ったもんだから肝っ玉の小さい刑部が急に盛り上がって、最初は反対していた霧立も「彼氏を寝取ったニクイ恋敵・入江」を快く思っていなかったのでホイホイとこれに協力。まず兄を殺害し刑部はどさくさ紛れに観音像をゲットし岡崎藩主におさまる。

 ファーストレディになった霧立は家柄も人格も優る入江に対しバッシングを開始。先代の忘れ形見のお宮参りの晴れ着に縫針を潜ませてインネンつけたり、それだけではあきたらず子供を誘拐し殺害しようとさえする。だがここは城代家老が悪者の手から子供を奪回しひそかに匿った。誘拐事件の責任を感じた入江の乳母・浪花千栄子が自害し、入江は孤立してしまう。

 天守閣に幽閉された入江。そこへ刑部が現われるが入江の必死の抵抗にあいまたもや退散。だがこれを見ていた霧立が逆上し入江を殺害する。入江の遺体は奥の小部屋に隠され扉が漆喰で固められるが、ある夜、頑丈な壁が大音響と共に破壊!中から化け猫に変化した入江が現われ怪異を起し始める。

 霧立は化け猫におびえて庭で転倒し顔に青タンを作ったり、入江に操られて夜中に角兵獅子やらされてノイローゼ。刑部も兄と入江の幽霊コンビに悩まされていた。ある夜、行灯の油を舐めている霧立を発見した刑部は「見〜た〜な〜」と凄む彼女を斬殺してしまう。

 入江の父親はオカルト研究家だったため都を追われていた。娘の死を知らないこの親父が「観音像を壁に埋めれば化け猫は出なくなる」と余計なアドバイスをしたため入江は封じ込められてしまう。だが父親は、子供の夢枕に現われた娘のメッセージにより刑部の部下に斬られながらも観音像を掘り出し入江を復活させる。入江は子供を殺そうとした刑部の部下を家老と共にバッタバッタと爪でひっかいて倒し、ついに刑部の喉笛を噛み切り復讐を果たす、効果音は雷鳴!

 「シャーッ!」と唸ったり、屏風の上にひらりと巨体を(入江は身長162センチ、当時としてはかなり大柄)舞いあがらせ招き猫(ねこじゃらし、とも言う)のポーズで憎っくきお局様にブリッジやバク転をやらせ、追手との対決シーンではフライングまで披露!屋根を突き破って逃走する。すごい、すごいぞ!入江たか子!

 実母であると生前は名乗れず死んでから枕辺で告白する。そして息子を守るために大活躍。入江の優雅で絢爛たる美しさが哀れを誘う、そしてイキナリ壁をぶち破る化け猫になるどんでん返しの面白さ。化け猫封じの呪いやらがなんだかドラキュラや狼男みたいで面白い。で、それを母性で突破するところが女性キャラクターらしいところ。「母は強し」でちゃんと泣かせる場面も用意してある。

 「怪猫岡崎騒動」はホラー映画の仮面を被った母子物映画でした。入江たか子の円熟した化け猫演技に感心しながら君も泣いてみませんか?

1997年08月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16