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うなぎ


■公開:1997年

■制作:今村プロダクション

■監督:今村昌平

■助監:

■脚本:

■撮影:

■音楽:

■美術:

■主演:役所広司

■寸評:


 妻を殺害した男・役所広司が仮出所する。役所は保護司の常田富士男の世話で河川敷に理髪店を開く。無口で鰻だけを話し相手にしている役所のところへ出入りする人間達のドラマ。

 船大工の佐藤允は鰻獲りの名人で妻に先立たれた境遇でもあり、役所になにくれとなく世話を焼いてくれるたくましい奴。UFOの存在を信じているボンクラ、気のいい花粉症のチンピラ・哀川翔、自殺未遂する女・清水美沙、どうしてあんなハゲ(常田は寺の坊主)と結婚したんだ!というくらい色っぽい女房・倍償美津子、役所のシンパはみなお人好しばかり。

 清水の母親・市原悦子は少々パー。しかし市原悦子ってワンパターンな人だなあ、メディアに登場するといつ何時でも無学でバイタリティーのあるオバサンばっか。清水の愛人は金融会社の社長でヤクザ。清水自身も副社長だったりして、結局はそのチンケな男のバカ社長のために自殺未遂をしたらしいのだがそのあたりの事情がすっきりと説明されていないので、どうもよくわからない。

 鰻が「エロ事師たち」の鮒みたいに重要なファクターなのかというとそうでもなくて、途中でその存在がどんどんかすんでしまう。それに役所が女房を殺した動機についても「浮気を告発する手紙を見て逆上した」というのが実は手紙は役所の妄想というちょっと曖昧なオチなのが歯がゆいところ。

 役所の過去へのわだかまりの解決を、刑務所仲間の柄本明に一任したのはなんとももったいない。それも陳腐な殴りあいで。人殺しの過去を引きずってなお美人の清水に惚れられている役所を妬んだ柄本が「あいつは人殺しだ」って出自ばらしして、対決して殴りあって、、役所よ、柄本を殺っちまえ!なんてついイライラしてしまう。だってすごーくモタモタしてんだもん、アクションが。

 清水を追ってやくざが乗り込んできたときの大乱闘もモッチャリしていてイマイチ。ここでは「アンタたち!やめなさいよお」とドスを効かせて大柄な手下共をビタビタやっつける倍償ねーさんが、断然、カッコイイ!はい、ここで「探偵物語」(松田優作・主演)思い出した人には座布団差し上げましょう!

 今どきアイパーに白エナメル靴が似合う若者なんてそうはいない。撮影所時代のアクション映画のかおりをもつ男・哀川翔、一歩間違うと十の経ったちびっこギャングみたいですけど、長淵剛の映画やテレビに出ている硬直・哀川よりもちょっとコミカルな今回のやんちゃ坊主のほうがずっと素敵。

 鰻、佐藤允、清水美沙、それと手紙。どれも中途半端で説明不足。冒頭、刑務所時代の癖だといって消防署のランニングに参加しようとしちゃったりする小ギャグが最後まで生きてればかなり素敵だったと思うんですけどそれも雲散霧消。ま、人間のほうがうなぎよりずっと生臭い、ってあたりがオチなんでしょうな、おあとがよろしいようで、、。

1997年08月20日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16