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狼男とサムライ


■公開:1984
■制作:アマチフィルム
■監督:ハシント.モリナ
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:天知茂
■寸評:ポール.ナッチィとハシント.モリナは同じ人です。


 天知茂の最後のテレビ作品はNHKの「大経師昔暦(近松物語)」ではなかったか?嫉妬に狂う大経師役で撮影半ば、天知茂が突然、逝ってしまい後任は金田龍之介だった。「天知の大経師」これはぜひ見たいところだがそれは今となっては叶わぬ夢だ。

 中世のスペインでならず者を倒した剣士が国王の娘と結婚する。ならず者の恋人が魔女で、彼女が恋人の仇討ちがてら娘に狼の呪をかけたため、剣士の一族には数世代ごとに狼男が産まれてしまう。魔女は倒されたが、その子孫は魔女の呪に苦しめられていた。呪を解くカギはジパングにあるらしい!なんて強引な展開なんだ。そこから舞台は一気に戦国時代の日本へ。その頃、京都に人間を襲っては惨殺する化け物の噂が広がっていた。

 織田信長・宮口二郎の家臣を父に持つ医者の貴庵・天知茂は市中警備の重責を負った父をサポートすべく独自に犯人を追っていた。貴庵は満月の夜になるときまって事件が起こることにヒントを見い出す。やがて出会った南蛮人のバルデマル・ポール・ナッチィ(監督も兼務)の奇病が原因だと知った貴庵は何度か治療を試みるが、、。

 バルデマルは普段はパバロッティ風の恰幅の良いスペイン青年だがひとたび満月を見ると狼男に変身し、よだれ垂らしながら京都の町を疾走、被害者の頚動脈を噛み切ったり、鋭い爪でジョリジョリしてしまうのだ。なんとも迷惑なビョーキ持ちなのである。

 バルデマルが件の剣士の子孫なわけだが、母国の高名な科学者の勧めでわざわざ極東の島国まで貴庵を頼って来たのである。ステキな美女をお供に従えて。でもって、やっとこさ貴庵に出会ったのだが薬が全然効かなくてガックリ。失意のバルデマルを励まそうとしたお供の美女が京都のお色気妖怪に騙されたため幻の城であわや虎の餌食にされそうになったりする、踏んだり蹴ったり状態だ。

 ここに天知の父親を好ましく思っていないライバルの陰謀とかがあって、天知茂は温泉で入浴中に忍者に襲われる。天知がバルちゃんの治療をほったらかして多忙を極めたため肝心の「秘薬」の開発がうまくいかない。そこでいきなり天知はお色気妖怪が持っていた銀の太刀をバルちゃんにホの字だった妹・朝比奈順子に持たせて、バルちゃんの胸を貫いて焼き殺すことを決意。哀れなバルちゃんは病気も完治せぬまま殺されてしまう、という血も涙もないお話し。

 この作品は劇場公開されなかった。作品の制作をめぐってトラブルがあり、天知茂はフィルムの到着を待たずに他界したので、日本語版の吹替えは、本編で織田信長を演じた宮口二郎が担当している。

 主役のバルデマルことポール・ナッチィは監督と脚本も手がけている。狼男のカブリモノはマンガチックではあったが寸足らずで顔もデカイ、愛敬のあるバルちゃんの元気なアクションのおかげでなかなか怖かった。口から血&唾液をだらだらさせてるとこなんかグーですよ。

 お色気妖怪の住んでいる城の衛兵がみな女性で、素肌に鎧を装着してたり、わざわざ賑やかな居酒屋を襲った狼男の犠牲になる町娘が胸をはだけて噛み殺される、、とまあ実に「土曜ワイド」的な素朴なお色気シーンがふんだんに盛り込まれている。やはり天知茂は「土曜ワイドの人」だったのだ。

 天知茂は情念の濃い演技をしていながら実はとても分かりやすい娯楽映画で大活躍した人だったと思う。非情だとかハードボイルドだとか、あえてそういうキャラクターを誇張して楽しんでいたようにも思える。若い頃は新東宝という社風のなせる業かもしれないが結構、ハチャメチャ演っていたし、そういうのが好きそうだった。

 娯楽映画は役者がシラケたりイイ気になって演じてはイケナイ。どんなにばかばかしくても大真面目に役に取り組んでこそ、観客は楽しめるのだ。わざとらしくなく、あざとくなく、いつも情念のエナジーを内に秘めB級映画で眉間のクレパスを際立たせていた天知茂は娯楽映画の本物のプロだったと思う。だからこの映画は天知茂の「遺作」としてとても味わい深い。

1997年06月29日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16