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浪人街


■公開:1989年
■制作:山田洋行ライトビジョン、松竹
■監督:黒木和雄
■助監:
■脚本:笠原和夫
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:原田芳雄
■寸評:蓮司さん、カッコイー!


 飲み屋の用心棒・勝新太郎、刀の試し斬りをして日銭を稼ぐ石橋蓮司、よたかの樋口可南子のヒモのような生活をしている原田芳雄、仕官を夢見る鳥屋の田中邦衛。それぞれ凄腕の浪人達の共通項目は酒好きであること。ある日、元侠客の飲み屋の主人・水島道太郎が面倒を見ているよたかが殺された。

 よたかは売春婦のことで、原則的に野外とか船の中とかそこいらへんで商売をする女たち。子連れの年増よたか絵沢萌子(いつもこんなんばっかだけど)などいて家庭事情も複雑でそれぞれ健気に生きている。対する浪人達にもそれぞれ事情がある。この物語は浪人といういわば住所不定無職状態の男の悶々たる日常が、たまり場になっている飲み屋を舞台に、度重なるよたかの惨殺事件に端を発するエリート(旗本)への劣等感で一気にスパークするまでを描く。

 旗本が退屈しのぎに「世の中の秩序を正す」とかなんとか適当に自分達を正当化してよたかをなぶり者にしている。そのボスが中尾彬。鼻の穴をブヒブヒいわせながらこの殺人を仕切っている、ヤな奴。しかしこの人っていつからこんな悪相になったんだろう?それはさておき、

大体、旗本ってあまり良い言われを方しない。権力を嵩に着てやりたい放題の愚連隊である。

 水島道太郎が殺され、樋口と田中邦衛の妹(!?)杉田かおるが中尾に立ち向かうが、捕まってしまい旗本連中の衆人環視の中で牛裂きにされそうになる。飲んだくれで占星術に凝っている原田芳雄は飲み屋の若衆に金で雇われ、ついに樋口救出に立ち上がる!

 50歳を目前にした原田芳雄の鍛え抜かれたカラダは一見の価値あり。ヘアスタイルはボブマーリー(つまりレゲエ)で酒ばっか飲んでいるのでやや持久力に欠けるのがオジサンらしいが。ふんどし(醤油で煮しめたような茶色!)はためかせながらのダイナミックなチャンバラは迫力満点。

 それに対して蓮司さん。酒は程々に嗜み、節度のある態度で樋口を抱こうとする。結局は果たせないが武骨で正直でナイーブで、と母性本能刺激しまくり。原田の後を追って樋口救出に走る!どこから持ってきたんだかいつもの(それでも浪人仲間の内では身なりは良いほうだけど)貧乏衣装を白装束に着替えて登場。衣装替えてる暇があったらとっとと行けよ!なんてヤボは止そう、とにかくカッコよかったんだから。

 カッコイイ蓮司さんなんてめったにあるもんじゃないぞ!(失礼)旗本共をバッタバッタ斬りまくって返り血を浴びる姿なんて、「犬神家の一族」の高峰三枝子よりずーっと迫力あった(適当な比較対象が見つからなくてすいません)。

 旗本の中尾の「犬」になった勝新太郎だが最後に中尾をガードするフリをして自分の腹に刀を突き刺しそのまま相打ちにしてしまう。串団子状態で倒れるのだが下敷きの中尾彬がいかにも重そうなので見ていて大笑い。

 この物語は戦前のオリジナルから何度もリメイクされている。三人のキャラクター(ハード、ニヒル、コミカル)設定は「三匹の侍」にも「ゲッターロボ」にも受け継がれているまさにトリオ・ザ・ヒーローズの元祖的な存在か。「マキノ省三に捧ぐ」という冒頭のメッセージがあるようにこれはオールドタイマーへのオマージュだ。長門裕之がうどん屋の親父で強引に出演しているのもそのせい。監修がマキノ雅裕で、撮影に宮川一夫の名前を冠しているところも。

 これだけヒーロー側を充実させたのに悪のボスが中尾彬だけってのは弱い。どう見ても二番手でしょ?入れ墨がチラッと覗く水島道太郎の方がめちゃくちゃカッコ良かった。これくらいの人に悪いほうやってもらえると良かったんだけどねえ。と、少々クヤシイところもあるのだけれど、役者も殺陣もドラマも見応えあったし、蓮司さんがカッコ良かったのがとっても嬉しかった、大人の男の映画。

1997年07月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16