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里見八犬伝


■公開:1983年
■制作:角川映画
■監督:深作欣二
■助監:
■脚本:深作欣二、鎌田敏夫
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:夏木マリ(筆者認定)
■寸評:すべてはマリのために!


 海老一染之助・染太郎がラスベガスのショーで大受けだったように、言語を超越した「芸」はワールドワイドなものである。ハイパー角兵獅子の親方・千葉ちゃん一家総出演のわんぱく映画。

 妖怪軍団、タマズサ・夏木マリ、息子・目黒裕樹に攻め滅ぼされた里見城。ここから落ちのびた静姫・薬師丸ひろ子は不思議な光る玉を持った修験者・千葉真一、寺田農に助けられる。彼等の話から全部で8人の仲間がいて、静姫を奉じて妖怪軍団をやっつける運命だと分かる。静姫は縁戚を頼って行くように忠僕・鈴木瑞穂から告げられているが、千葉の話に決意を新たにし「八剣(犬)士」を探しながら悪を滅ぼすために旅を続けることにする。

 楽士の京本正樹、ヒットマンの志穂美悦子、ボランティア活動をしている苅谷俊介と子供、妖怪軍団に与していた大葉健二、そして百姓育ちで実は夏木マリの子供だった真田広之。これが残りの正義の味方チーム。ショッカーの怪人手術みたいなのをしている汐路章、ムカデのヨネヤマ・ママコ、大蛇の萩原流行、マザコンっぽいけどかっこいい目黒と、デンジャラスクイーン・夏木マリ!これが悪の軍団。

 まずリーダーの千葉ちゃんが「体が崩れる病気」であと一月の余命なので「早い展開」が義務づけられる一行。華やかな婚礼の席(岡田奈々と、な、な、なんと曽根晴美のカップル)で暗殺事件発生!どさくさに紛れて「曽根より京本がイイ!(当然だ)」と逃げ出した奈々ちゃんが京本の目前で殺害される。悦っちゃんを逆恨みした京本だったが奈々ちゃん(リーサルウエポンに改造されちゃう)が夏木軍団の手にあることを知りすすんで仲間入り。

 千葉ちゃんのパートナーはやっぱ夏八木勲が良かったんだけど、、。それじゃあ体育会系だけでダメっすかねえ。千葉ちゃんの「傷ついたヒーロー」と「保護者の頼もしさ」は良かったなあ。最期は「弁慶」と、ほれ、あのビクターマチュアの「サムソンとデリラ」みたいにゴージャスにケレン味たっぷりに死ぬのだ。

 だが、今回一番イカしたのは大葉健二だと思う。最初は静姫を殺そうとするが「玉」の霊力で己の非道な過去を反省し、ひろ子ちゃんと仲間を助けるために矢でウニのようにされて死ぬ。クーッ、カッコ良すぎるぞ!おまけにショッカーに改造手術されそうになった(されちゃったんだけど)真田も救出してくれたし、、。

 悦ちゃんは新体操のリボンみたいな踊りを披露したり、ナルシスト妖怪・萩原とラブラブになりそうになったりする。萩原がこれまたイイんだなあ。妖術アイテムはヘビ。クリムトのできそこないみたいな壁画に囲まれた部屋に立っている姿が、なんか、もう力一杯キワモノしてます!なのだ。

 この映画は夏木マリのためにある!のだ。ひろ子ちゃんも良かったんだよ、素直で一生懸命で。だがそんなものはマリの「作り物の凄み」の前では消し飛んで見えた。血の池ジャグジーでひとっ風呂あびて見事なヌードを披露!息子とラブシーン(いや目黒が相手だから別にヘンじゃないけど)を濃厚にキメて、真田広之も誘惑、衣装はキンキラキンの「天草四郎」風でちょっと「勇気のいりそうな」ドハデさだったが、それを実に堂々と着こなしてくれた。

 「エロイムエッサイム」(「魔界転生」参照)の佳那晃子を軽くクリアするほどのインチキ臭さと迫力に拍手をせずには居れませんぞ。夏木マリなくしてこの映画はなかったのだ、いや、本当に。

 特撮もなかなか見応えありました。悪魔の城の御本尊がちょっと貧乏(スチロール)くさかったのを除けば、城が崩壊するところとか、巨大ムカデの襲撃とか、特に囲炉裏を突き破ってムカデが飛び出すところ。筆者は昆虫類が一切ダメなのでマジで鳥肌でした(ほめてない、かな?)。

 「南総里見八犬伝」のオリジナルである「水滸伝」をさらに鮮明に彷彿とさせSF色も存分に、そしてラストは八人のうち七人がそれぞれカッコ良く死んでしまうので、まるで「七人の侍」みたいでした。ロケは阿蘇ですか?やっぱ南国のお天気晴れ晴れが「御殿場ロケ」を見慣れているものには、これまた新鮮だったような気がします。

 成田三樹夫がちょびっとしか出なかったのと松坂慶子が徹頭徹尾「声」だけだったのは予算足りなかったせいでしょうか?特撮に金をまわしすぎた、、とか。

1997年05月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16