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平成無責任一家 東京デラックス


■公開:1995年
■制作:アミューズ
■監督:崔洋一
■助監:
■脚本:
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:岸谷五郎
■寸評:岡田真澄:長身美形のハーフタレント、ニックネームは「ファンファン」


 無責任ってばクレージーっしょ?

 詐欺師一家の次男・岸谷五郎は地元で食いつめ、一家揃って東京へ進出する。母・絵沢萌子、マネージャー役兼母の愛人.岸部一徳、父親不明のハーフの男の子、長男夫妻、この一家に工場をつぶされた塩見三省麿赤児らが繰り広げる珍道中。

 ホテルの宿泊代の踏み倒し、ニセ金塊作り、インチキ警官隊、美人局、次々に人をだまして生き延びる一家。反目したり仲間割れを起こしたりするが家族がピンチに陥ったときの団結力の固さはすごい、まるで「アラモの砦」のようだ。

 床屋の一家の娘の知り合いだと偽って居候を決め込む一家をもてなす主人・桜井センリ夫婦。とうとうお別れの日になったとき桜井から実は途中で彼等の正体を見破っていたのだが「なんだか家族が増えたみたいで楽しかった」と笑って見送る。これにはさすがに心臓に毛の生えた一家も自己嫌悪に陥る。人の善意にはとことん弱い人達なのである。

 ハーフ男の子が岸谷から「ハーフはデブ(おまけにハゲ)になるぞ!」とからかわれるシーンが妙にウケていたのだがおそらく、ほとんどの観客の脳裏をかすめたのは岡田真澄の現在のかわりはてた(少なくとも彼がフランスの美男俳優、ジェラールフィリップに似ているということで付けられたファンファンというニックネームが名実共に納得できた頃を知っている人々にとっては)姿であったろう。

 最近、不安定な精神状態の大人を演じさせたら右に出るものがいなくなった岸部一徳だが、上には上がいるものだ。彼をハメる美貌の詐欺師が鰐淵晴子。ノンちゃんは雲に乗って竜宮城へ行き玉手箱を十個くらいまとめてあけてしまいました!みたいな状態の晴子さん。ヘンな一徳がまったく太刀打ちできないくらい凄いヘンパワーに満ちていた。

 ぼったくりホストクラブを騙してあと一歩というところで本物の警察に踏み込まれた一家が必死で逃げる!細い路地を走る!走る!マンガのように派手なアクションと無表情を崩さない一徳に比べ、母親の絵沢萌子はマジでシンドそうだ。このままポックリいくんじゃないかとハラハラして全然笑えなかったぞ、このシーン。

 この映画は東宝の植木等モノ(クレージーキャッツ映画)のパロディである。私がなによりうれしかったのは桜井センリの起用。桜井センリはクレイジーキャッツ映画ではいつもメンバーの後から必死についていくタイプ、真面目で一生懸命で、地味。そういる役回りだった桜井センリをなんとも印象的な良い役で使ってくれたのが嬉しかった。桜井センリが思いっきりハゲてしまっていたので最初は誰だか分からなかったってのがちょっと困りましたけどね。

 スカッとしたいのにどうもリズムとテンポがない。決してつまらない映画ではないのだがなぜか思いきり笑えない。器用なドタバタでお茶を濁すような雰囲気があって、崔洋一ってこんなもんなの?と不安になった。続く「マークスの山」でも、さらにその不安は膨らんだ。職人監督にありがちな「とりあえずなんでもまとめてしまう」技量だけが買われてしまい、「裕次郎からヤマトまで」の舛田利雄監督のようになってしまうのでは?と筆者、少々不安です。

1997年07月31日

【追記】

平成14年、崔洋一監督はポスト・大島渚を目指しコメンテイターとして活躍中です。

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16