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東京上空いらっしゃいませ


■公開:1990年
■制作:ディレクターズカンパニー
■監督:相米慎二
■助監:
■脚本:榎祐平
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:牧瀬里穂
■寸評:「死を受け入れる」ために精一杯「生きようとする」幽霊の物語


 ただのアイドル映画だと思って見たら、予想を遥かに超える良作だったので大満足!モチベーションの高い幽霊って?

 キャンギャルの牧瀬里穂はスポンサーの社長笑福亭鶴瓶に強引に誘われホテルへ連れ込まれそうになる。後を追ったルポライターの出門英の眼前で鶴瓶の車から飛び出した牧瀬が車にはねられて死んでしまう。スキャンダルを恐れた鶴瓶は牧瀬のプロダクションの社長・藤村俊二に命じて牧瀬が病気療養中であると発表させる。牧瀬のマネージャー.中井貴一は牧瀬が死んだことを知らず自宅のペントハウスの階下の住人・毬谷友子といちゃいちゃしていた。そこへ牧瀬が空から降ってきた。

 死んだ牧瀬が天国への案内人のコオロギ(笑福亭鶴瓶の二役)を騙して「本人」として蘇る。「牧瀬が死んだことを知っている人間に会ったらそのときは地上から消えなくてはいけない」と鶴瓶から言われた牧瀬は幽霊のまま生き続けようとする。まるっきり生身で元気良く走り回る牧瀬の姿を見た中井貴一は、最初は「生きている」のだと思い込むが、ふざけて撮影したポラロイド写真に写らなかった牧瀬を見て、彼女が幽霊であることを確信する。

 鶴瓶は強引な社長とお人好しの天使の二役を演じますが、やっぱりこの人には三枚目でヌーボーとしたキャラクターが似合いますね。中井貴一は陰気なのでこの作品のような「おとぎばなし」には不向きだと思ってましたが、商業主義に走る大人達の社会の中で純真な幽霊=牧瀬を守ろうと不器用に奔走する姿には清々しいかわいらしさがあってなかなか良かったです。

 当時の牧瀬里穂はまだ下っ腹がポコンと出た幼児体型、健康的で筆者は好きですけど。いきなり踊ったり歌ったり笑ったりするので、どうした!牧瀬、キレたのか?と、最初は戸惑いますが慣れると平気です。自分の「生」を確かめるように全力で「死」に立ち向かう姿がバカみたいですが、だんだんと「死んでいる」事実を受け入れて、それでもくじけない明るさが最後の別れのシーンにキモチの良い涙を誘います。

 中井のペントハウスから見える東京の夜景、中井と牧瀬が屋形船でデートする花火など光学処理っぽい、どこかノスタルジックで幻想的な視覚効果が万華鏡のようにキラキラと展開するストーリーをガッチリ支えていて素晴しいなあと思いました。もっとも、それは3DCGに食傷気味の現代だから言えるのかもしれませんけどね。

 喜怒哀楽を全身から発散させる牧瀬里穂にふりまわされる中井貴一に「自分に戻ったのは大正解だった!」とお礼を述べた直後、牧瀬が中井のトロンボーンを持って天国へ旅立つ。雨の中で復活した牧瀬は再び雨と共に去って行きます。

 ラスト、新しいトロンボーンを買った中井の横をすり抜ける少女(=牧瀬里穂)のカットはお約束ですがこのさい、そういう細かいことには目をつぶりましょう。最初から最後まで牧瀬里穂に無理やり引きずられっぱなしのSFファンタジー映画。

1997年08月02日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16