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女奴隷船


■公開:1960年
■制作:新東宝
■監督:小野田嘉幹
■助監:
■脚本:田辺虎男
■原作:
■撮影:
■音楽:
■美術:
■主演:菅原文太
■寸評:イタリアの女囚モノを豊富とさせる海賊アクション。


 三船敏郎が若い頃に出演した「奴隷船」を女だらけでやったらどうなるか?という映画(か?)。

 第二次世界大戦末期の日本海軍。南方の前線から暗号写真を携えて将校の菅原文太は輸送機で飛び立った。途中、米軍の襲撃を受けた機は海上に墜落する。文太は人身売買の船、お唐さん船に救助されていた。ある日、この船を丹波哲郎率いる海賊船が襲う。売られる女達と共に文太は海賊船に乗せられることになった。

 この人身売買船で船長の情婦になっていた三原葉子はケンカが強くてイカす文太にモーションをかけておきながら、今度は海賊の首領である丹波に取り入るというとんでもない奴。プロの娼婦に混ざって一人だけ素人娘・三ツ矢歌子がいて、他の娼婦達は三ツ矢を妹のようにかわいがっている。

 海賊たちのアジトで競りにかけられる女達。スキをついた文太が海賊達から武器を奪い、女達も銃をとって戦う。最後に残った丹波と文太が素手で対決し文太が勝つ。

 ともかく話しが二転三転するのでせわしない。丹波は人望があまりないため部下に簡単に裏切られる。で、丹波が裏切り者や文太をすぐ許したり殺さなかったりするので、またまた形勢逆転。ちょっと考えればものの30分程度でケリがつきそうなストーリーを大した必然性もないのに無理やり90分に延ばした感じ。その無理やり感を帳消しにするのが5〜10分サイクルで展開される女性軍のエロシーンだ。

 まず三原葉子。このテのB級映画にはなくてはならない巨乳系アイドルの元祖。ふっくらした童顔にナイスバディがまぶしい。で、これがステレオタイプの悪女で、汗臭い男共にグイグイ迫って「あたしを特別扱いしてね」とおネダリ攻撃。海賊のアジトで色っぽいダンスを披露し体だけでなく芸も絶品ってところを思いっきりアピールしてくれた。

 舞台は上海、季節は夏。男達はともかく集団で登場する女奴隷のみなさんはアッパッパ姿で汗まみれ。むせかえるような色香とはこのことか?おまけに競り落とされた女は太股に焼き印を押すしきたりがあって、ピラピラスカートの裾を思いっきりめくり上げてそこへグーッとカメラが寄ったりする。昔の女優はエラかった。

 胸元ドカーン、おみ足スラー、どうだどうだの101匹ねーちゃん大行進状態。が、しかし。奴隷の中の三ツ矢歌子姫だけは袖付ブラウスをぴっちりと着こなして膝から上は1ミリたりとも見せないという鉄壁のガード。丹波がなんとかベッドまで連れ込むがあと一歩のところで文太を捕まえた部下が報告に来たりして毎回セーフ。この年、三ツ矢と結婚した小野田嘉幹が監督であるから、まあ許してあげよう、それが大人だ。

 この映画では丹波哲郎が圧倒的にカッコイイ。善とも悪ともつかぬアンニュイな雰囲気が持ち味。長身でスリム、当時の日本人としては希有なほどガイジンしている丹波はボロっちい手下どもとは違ってシミ一つないシルクのブラウスを胸元はだけて(女性客へのサービスか?)着こなし、黒いスリムパンツに黒ブーツ。パッと見は「ベルサイユのバラ」におけるアンドレ風。さすが世界のタンバ先生、すでに国際化への萌芽が読み取れるのだった。

 新東宝で海女モノと同様に人気を博した「女シリーズ」。「女体渦巻島」と並んで人身売買映画の傑作と言えよう、そんなジャンルがあるかどうかは別として。大島あたりでロケした南国情緒が満喫できる、新東宝のお色気アクション映画。

1997年06月30日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16