十手舞 |
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■公開:1986年 |
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断罪に処せられた罪人たち・川谷拓三、片桐竜次、安岡力也は、同心・渡瀬恒彦の命令で超法規的粛正集団「影十手」となって生き延びる。幕府の大身が絡んだ抜け荷の秘密を探っていた影十手達は一味のボス・地井武男と情婦・夏木マリらを抹殺に向かうが、そこには川谷の娘・石原真理子がいた。 川谷は石原を助けるが地井とマリに疑われた石原真理子が人質になり、誘き出された影十手は全滅する。 今度は石原を処刑場から救い新・影十手として利用することを思い立った渡瀬。石原は廻船問屋の主人・世良公則が実は武士であり、藩の重役・小沢栄太郎の命令で抜け荷をしていることを突き止める。証拠は偽造された証文。これをめぐって夏木マリや同心・竹中直人、世良、そして影十手らが争奪戦を繰り広げる。 オープニング、虹色のリボンをくるくるしながら踊る石原真理子の姿で「しまった、来るんじゃなかった」と劇場に広がる脱力感。いや、きっといつかは面白くなるにちがいない。そんな観客のいちるの望みは本編がスタートした途端に打ち砕かれるのであった。 川谷拓三ら初代・影十手の面々は喉笛を斬られているので台詞なし。が、川谷は喋る、どうやって?手話で、である。字幕ではなくアフレコ付。う〜む、なんだこのやるせない空気は。極悪チイチイは魔女・夏木マリとともに影十手達をいたぶるが、宙吊りになっている石原真理子がねえ、なんか全然悲壮感がないのね。どう見ても肉屋の店先のようなだらしなさでブラーンとしているだけ。娘恋しさの川谷の熱演よりもなによりも石原のダルイ演技に目がいっちゃって弱りました。 この映画が切ないのは、せっかく良い脇がたくさんいるのにあんまり活躍しないこと。太腿がまぶしい佳那晃子はピーターに心中を仕掛けて返り討ち。ピーターも女衒の極楽とんぼの雰囲気で良かったんだけどよく分からないうちに死んでしまう。初代影十手もなんでわざわざ力也や片桐を使う必要があるの?って感じで、豪華!よりもモッタイナイ!と思うほうが先でした。 今回の技能賞は夏木マリ。妖艶なアバズレ演技で美味しいところ総ざらい。形勢有利なときの高笑いはまるで白雪姫の魔女そのものでそのうさん臭さは癖になりそう。不利になると前後の見境なくあわてふためく、が、ちゃっかりバーターに持ち込んでセーフになるこすっからさ。マリさん、素敵です。 殊勲賞は竹中直人。地獄というあだ名の同心で、ヒルのような小悪党かと思うと意外に頭が切れたりする。善とも悪ともつかないキワモノ演技がなかなか面白かったが、ちょいと遊びすぎた。「アチョー、オオウリャー!」とカンフー映画のノリで殺陣を披露。 石原真理子はシークエンス毎にスモークの背景に五色のライトを浴びながらリボンをくるくる回す。意味不明、思考停止。石原だけじゃあ足りないと思ったのか夏木マリも色っぽいダンスを披露する。できそこないの日劇ミュージックホール風。 こんな映画でも見所がないわけじゃない。映画の終盤、藩に捨てられた世良が追手の刺客トリオ・伊吹聡太郎(殺陣の伊吹)ら相手にモノトーンの画面で見事な殺陣を見せてくれた。いずれも東映時代劇映画やテレビでお馴染みの人々で、大上段の構えの二人を従えた伊吹聡太郎の居合抜きがボクシングで言えば「顔面とボディーを打ち分ける」風でめちゃくちゃ渋かった。このまま終わってくれたら、今までの事はすべて帳消しになるところだった、が。 いよいよ渡瀬と石原真理子の対決。「アンタガオトッツアンヲコロシタンダ」と舌足らずの上に句読点のかけらも感じさせない棒読み台詞の後、石原がリボンをビュンビュンしながらのんびりと渡瀬に迫る。だるい、、あまりにもだるい。待ってる渡瀬が困っているぞ!そして最後に一人残った石原真理子。ホリゾントの七色ライトをバックに極太眉毛が映えて映画は終了。エンディングはついさっき死んだ世良の熱唱でトドメ。 「彼女(石原真理子)にはもっと他にも適した仕事があると思うんですが」と制作終了後、五社はインタビューに答えたらしい。その仕事ってのは「この作品」なのか?「女優業」なのか?石原真理子は結構好きな筆者だが今回に限り五社監督に座布団一枚差し上げます。 ちなみに、ダンスの振付は元オリンピック選手の山崎浩子でしたとさ。 (1997年07月08日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16