海女の化物屋敷 |
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■公開:1959年 |
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この映画に海女の化物かまたは化物のような海女が出てくるんじゃないか?と期待した人は馬鹿です。 過剰なサービスは時として迷惑なものだがこの映画はサービスとはなんなのか?という娯楽映画の原点を教えているような気がした。(って、そんなわけないけどさ) 豊かな漁獲量を誇る魚場を所有していた青山家の若当主が変死した。その妻は発狂し自殺。長女は駆け落ちして行方不明となり、末娘・瀬戸麗子が後を継いでいた。魚場を狙う地回りから嫌がらせを受けたりしたが気丈な瀬戸は先祖の財産を守るべく孤軍奮闘。ある夜、気配を感じて目を覚ました瀬戸の枕元に髪の毛をおどろに振り乱した女の幽霊が現われる。 磯では瀬戸の親友の海女・万里昌代が仲間の海女と喧嘩していた。海草の研究家・沼田曜一は万里を抱き込んで瀬戸の家に代々伝わる財宝を狙う。 瀬戸の友達・三原葉子が遊びに来た。三原が来てから一層、怪異はひどくなる。お風呂上がりの三原が目を離した隙に瀬戸の目前に現われた幽霊。三原は後を追った。 三原の恋人の刑事・菅原文太は黒真珠のネックレスを飲み込んだ女の他殺死体が見つかったため、これは三原の友達と関係があるのでは?と彼も浜へやって来ていた。気丈な三原は幽霊の正体が、地回りに雇われた下男と女中の企みだと気付く。パーティーの会場に現われた三原はストリップショーのように艶かしいポーズをとりながら下男に雇われた近所のババアが捨てた幽霊の衣装を脱ぎ捨てて犯人を慌てさせるが結果は裏目。ババアが自殺に見せかけて殺されてしまう。 あの(「地獄」参照)沼田曜一がまともな研究なんぞやっているわけがない。どうせ黒魔術とか爬虫類の喰い方とかに違いない、という観客の推理はスバリ的中。彼は地震で海中に没した瀬戸の家の墓所に財宝があることを突き止め、瀬戸を脅してと万里と(ついでに)三原と一緒に小船で隠し場所へ行く。 潜る海女を真後ろからカメラが追う。スクリーン一杯にデーンとムッチリした海女の下半身が登場!オオッとなったところで、イ・キ・ナ・リ、沼田曜一のアロハ・パンツのお尻が登場する、しかもアップで、だ。そうだよな、三人で潜っていたんだよなあ、とわかっちゃいるけど、わざわざそんなもん大写にするな!とケチのひとつもつけたくなるのが人情というもの。 三原葉子は海女ではない。なんだ、ガッカリなどと思うのは気が早い。そういう観客の期待を裏切らないのが大蔵貢の偉大なところだ。潜るのは万里と瀬戸だが、なぜか小船に誘拐された三原がどういうわけかシュミーズ一枚なのである。その姿にドキドキしたのは沼田の手下(と、観客)で、彼は欲情のおもむくまま三原に覆いかぶさるが、偶然そばを通りかかった菅原文太がこれを発見、三原とともに船から海へ飛び込み、手下の銃弾の雨をかわしながら泳ぐ。 今回の海女ルックは白い肌襦袢みたいなのに股がみの深いパンツ、というシロモノ。上半身は白い薄手の布地のルーズな肌着で下半身はパッツンパッツンである。これが濡れたらどうなるか、、。ジャクリーンビセット嬢のスケスケTシャツ(「ザ・ディープ」参照)を思い出していただけるとよろしいかと思います。 三原のシュミーズもバッチリだ!(って、なにが?)他に見どころを説明すると、今回は海女同士のプロレスまがいのシーンがある。波打ち際で繰り広げられる乱闘はほとんどが髪の毛のつかみ合いだが、相手の頭を海水へ叩き込むというシーンもあってなかなか激しい。ちょっと泥レスみたいではあるが。 沼田は長女と女房を手にかけているのだが、その殺人場面が実に変態っぽくてイイ。笑顔を浮かべながら額に汗してグイグイと首を絞める。ぐったりした女の顔に漬物石のダンクシュート。おまけに自分は水中銃に体を貫かれて惨めに死んでしまう。この天真爛漫な沼田曜一の狂いっぷりは「マークスの山」で不完全燃焼だった萩原聖人に爪の垢を煎じて飲ませてやりたくなるほど。 幽霊の登場シーンも、どろどろどろ〜んというお決まりBGMに乗って堂々と登場。やはり怪談映画には作法があるのだ。観客との約束事をきちんと踏襲するあたりがこの映画の制作者の真摯な態度をのぞかせて好印象である、ってウソこけ!この幽霊ってのがまた額から大流血!その血で固まったドレッドヘア気味のロンゲ、プラス、ちょっと上目使いでこれまたグーだ。 ムシムシ暑い夏なんだから涼しい映画を作ろう!海だ!水着だ!怪談だ!観客思いの大蔵貢が選んだ納涼海女映画というジャンル。大蔵同様、日本映画史上の一ページを飾った究極のキワモノである。 (1997年05月30日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16