クレージー メキシコ大作戦 |
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■公開:1968年 |
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2時間40分。上映時間を聞いた瞬間、きっと途中で激しい睡魔に襲われるだろうなあという確信が持てた。おまけにクレージー映画のなかでは興行配収がかなり低かったそうじゃないの。そりゃそうだよ、スラップスティックスギャグでこれだけの尺はもたないよ。 やくざの親分・田武謙三の身代わりとして刑務所に入っていたハナ肇が出所する。めざすはかつての恋人・大空真弓のところ。だが親分にフラれた腹いせに大空が親分のものになったといいふらすバーのママ・春川ますみにたきつけられたハナが、親分を暗殺しようと組事務所に行くと、そこには春川の死体が、、。 アメリカ進出を目論む親分がハナに指令したのはメキシコの秘宝を盗んでくること。だがドジなハナは指示された石像を詐欺師の植木等に横取りされてしまう。春川はこの石像の秘密を知ったために、ハナの兄貴分・中丸忠雄に殺されたのだった。親分に石像のニセモノを売りつけた植木は恋人・浜美枝とともにアメリカへ。その後を追って、谷啓、石橋エータロー、ハナが渡米。ハナを春川殺害の犯人として逮捕するため刑事の犬塚弘らお馴染みの面々が続々とアメリカに集合する。 石像にはメキシコの秘境に隠された莫大な財宝のありかが記されていた。これを狙ったマフィアが親分に提携話をもちかけて東京で開催されていた「メキシコの秘宝展」会場から石像を盗ませたのだ。そうとは知らない真面目な親分の田武謙三もアメリカへ!そこにはマフィアの通訳として日系二世の桜井センリが待っていた。 マフィアと田武に追われてアメリカからメキシコへ渡った一行の繰り広げる珍道中はまるで猿岩石状態。帰国する金がないからといって現地でショー興行をぶち上げる。当然、ここでは渡辺プロダクションのスターが出てきて、中尾ミエもカウボーイルック(超ミニスカ)で歌う。サボテンをイメージしたセットで歌い、踊るクレージー。ついさっきまで立場がバラバラだったはずなのにイキナリ、お揃いのスーツで登場。劇中ショーは唐突だがそういう映画なんだからしようがない。 古色蒼然としたニッポンヤクザ、マフィア、メキシコギャングが右往左往してのおっかけっこ。最後は春川を殺害した真犯人も逮捕されハナの濡れ衣が晴れる。組織が壊滅したので桜井センリも一緒に帰国、ハナを追い回していた犬塚弘も警察をクビになる。帰国後、団結したクレージーたちはメキシカンスタイルのバーを開店しみんなで楽しく暮らすことにした。 でもこの映画でいちばん面白かったのはクレージーではなく、彼等に(毎度のことだが)徹底的に振り回される田武謙三である。組を背負ってなんとか運営資金をゲットしようと必死になる姿は微笑ましい限りだ。全然偉そうに見えない、チョビ髭親父ルックが植木あたりに格好の攻撃材料を提供してしまう。 さらに筆者の睡魔を吹き飛ばしてくれたのは、なんでこんなところにいるんだ?としか思えない中丸忠雄。浮いている、どう考えても浮きまくり。親分の田武謙三よりはるかに偉そうな押し出しと、コメディ映画にあるまじきシリアスさで春川ますみを締め殺す様はそこだけ「国際秘密警察」のハードな世界になっていた。クレージーにくっついて海外でドタバタやらかすのか?とドキドキしたがハードに登場しハードなまま終わってくれたので、いささかホッとした。 宝探しは娯楽映画の基本である。しかしながら2時間40分は長い、いくらなんでも長すぎる。舞台がアメリカやメキシコへ飛ぶわりにはその効果はイマひとつだ。当初の予想とおり途中で寝てしまったのであわててLDを買いに行って見直しましたが、やっぱり、、、。 あっちむいてもクレージー、こっちむいてもクレージー、ドラマというよりコント、これだけ長尺になるとあちこちにほころびとして目だってしまうのがチト辛い。これが90分かそこらに収まっていたら凄く爽快だったと思う。日本にミュージカル映画が根付かなかった理由を少しだけ理解できたような気がした作品。 (1997年08月12日) 【追記】 |
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※本文中敬称略 |
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file updated : 2003-05-16