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ヒルコ 妖怪ハンター


■公開:1990年
■制作:
■監督:塚本晋也
■助監:
■脚本:塚本晋也
■原作:諸星大二郎
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:沢田研二
■備考:腰の低いキチガイ。


 アメリカには特殊メイク不要の芸人、ジム・キャリーがいるがここ日本にも竹中直人がいる。

 田舎の高校で古墳を調査に行った教師・竹中直人と女子生徒が行方不明になる。教師の息子、マサオはクラスメートらとともに夏休み学校に調査しに行くが、怪しげな用務員・室田日出男に追い返される。竹中の旧友で、妖怪実在説を唱える男・沢田研二が、失踪直前の竹中の手紙を頼りにやって来る。

 学校の体育倉庫ってのは実に事件の発生しやすいところだ。普段は人気(ひとけ)がない、ブラックホールのような場所。人が襲われたり、殺されたり、妖怪変化が現われたりと、ロクなことが起きないのが常だが。この映画でも土着の妖怪・ヒルコが封じ込められた古墳への入り口がココである。

 カッターナイフで自分の首をハネてしまうってのは大友克洋の「童夢」にも登場したエグいシーンだが、いやはやなんとも、ここまで首をちょん切ったり引っこ抜いたりする映画は初めてっす。血なんかこれでもか!って感じで大サービス。惨劇が起こるたびにマサオの背中に増えていく「人面疽(じんめんそ)」ってのは楳図かずおのホラー漫画によく登場していた懐かしいアイテム。

 「遊星からの物体X」に登場し笑いをとっていた「人面蟹」が大挙して出てくる。ヒルコってのは手足の生えたミミズみたいな化け物で、一見すると「エイリアン」の幼体にそっくり。それが一匹だけではなく、たくさんいるのだ。冒頭、失踪した少女が、ヒルコ軍団のリーダー「人面蟹」になっている。彼女が軍団の封印を完全に解除すべく、沢田とマサオを、慰めたり脅したりの「妖怪テクニック」で追い詰める。そのアイデアがこの映画の見せ場だ。

 沢田研二が大の「ゴキブリ嫌い」でキンチョールを手放さず、ヒルコに襲われた瞬間、とっさにそれを噴射したところ、さすがのヒルコも逃げ出すのだった。うーむ、ゴキブリだけでなく妖怪にも効き目があるとは。キンチョール、おそるべし。沢田はお手製の「妖気感知マシーン」を携えており、こりゃ、あーた「ゴーストバスターズ」のパクリでんがな。

 その「妖怪」がマサオたちに接近するアングルってのが、これまた、森の中の一軒家に生息して、宿泊者を次々に惨殺していた「死霊のはらわた」の地滑り走法を、猪の鼻息みたいな効果音とともにそっくり頂いているんですな。沢田研二がからっきしだらしないんだが、偶然暗記していた古事記の一説がおまじないの文言だったということで、妖怪退治に大いに役立ちました。「芸は身を助ける」というパニック映画の金字塔「ポセイドンアドベンチャー」のセオリーが脈々と生きています。

 ヒルコに幽閉されていた竹中もついに首をもぎ取られ、人面蟹にされてしまう。殺されたマサオの仲間も人面蟹になっていて、それらがグシャグシャ押し寄せてくるクライマックス!げー!気持ちわるー。が、体は蟹でも心は人間、ってことで、クラスメートの「人面蟹」たちは、ヒルコの大群を前に、マサオと沢田を逃がそうとします。自分たちが永遠に封印されてしまうにもかかわらず。なんという友情でしょう、感激です。

 恐怖の用務員・室田日出男の告白により、その昔、ヒルコを封印したのがマサオの祖父だと判明。絶体絶命の危機に陥ったとき、伝説の南部鉄瓶のような冠をかぶって、呪文を唱えるマサオ。妖怪ヒルコは再び封印され、恐怖は去ったのでした。

 途中でマサオが振り回す電動ノコギリは、「悪魔のはらわた」のブギーマンぽい。どこを見ても、どっかで見たことがあるシーンばかりで、それって狙いなんでしょうかねえ。スピーディーな画面と漫画チックな演技はとても面白かった。作り物感覚いっぱいのノスタルジックなホラー映画でした。

1997年02月20日

【追記】

2002年12月21日・・・キャストを修正。

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16