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男嫌い


■公開:1964年
■制作:東宝
■監督:木下亮
■助監:
■脚本:井手俊郎
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:越路吹雪
■備考:青島幸男@元東京都知事も逃げ出す4姉妹。


 長女・越路吹雪、次女・淡路恵子、三女・岸田今日子、四女・横山道代、という恐怖(美貌)の四姉妹。これに弟・坂本九が加わった一家の物語。ここへ2つの見合い話しが持ち込まれる。一人は独身主義者のビジネスマン・森雅之、もうひとりはマザコン・青島“都知事”幸男。見合いの場所に指定されたホテルのロビーに集合する四姉妹だが、仲人の叔母二人、京塚昌子南美江が渋滞に巻き込まれて遅刻。しかたなく直接対決とあいなる。

 森には悪友の日系二世・神山繁がいる。最初はこちらが見合い相手と思ったが、これがとんでもないプレイボーイ。四姉妹全員とデートをやらかし手玉にとろうとするが、事情を知った彼女たちから手痛い復讐を受ける。それを見ていた森雅之は、はたして誰と結婚するのだろうか?

 ジャックタチの「ぼくの叔父さん」という映画に、とても無機質なオートマチックハウスが登場する。なにもかにも電気仕掛けで、無表情。それが妙にユーモラスなのだが、この映画では四姉妹がまるでバービー人形のようだ。セットもかき割感覚いっぱいで、そう、リカちゃんハウスみたいな感じ。強烈な姉たちの行く末を心配している坂本九なのだが、とうてい見合いが成功するとは思っていない。

 シニカルな視線を投げかけ、「男なんて」と見せて、実は森にデートに誘われるとみんなポーっとその気になってとてもカワイイ。ただし、同じ手口で四股かけた神山は、九の悪友たち(峰岸徹、砂塚秀夫、内田裕也)に撃退されてしまう。これがまたミュージカル仕立てで、ステージの上を様々な衣装を着た四姉妹とアメカジの青年(内田裕也含む)たちが、モダンなダンスを見せてくれる。

 制作者に渡辺美佐女史の名前があるとおり、これはナベプロとのカップリングである。にもかかわらず、坂本九、中尾ミエ、越路吹雪らにただの一曲も歌わせない贅沢な作りだ。おハイソな階級の人々のバカバカしい悪ふざけ、と、とらえてしまってはこの映画はつまらない。

 ここは一つ、やたらゴージャスなディナーショーでも見ている気分で楽しむべきだ。神山繁のインチキくさい二世演技もなかなか達者なコントだし。よくもまあ新劇畑がここまでやってくれるよなあ、と拍手の一つもしてあげたくなる。でも神山繁の英語は本物なんだよね。丹波哲郎もそうだったけど神山繁は進駐軍の通訳を経てノースウエスト航空に勤務していたというマジで華麗なキャリア。

 バイクで事故った坂本九の友達三人が同じ様な包帯ルックで登場するのもシュール。葬儀の次は結婚式、と忙しいのがご自慢の京塚昌子おばさんもシュール。とにかく全編、セットから衣装からなにからなにまで徹底的に現実離れしてシュールだ。しかもとってもお洒落なのである。

 最後はこの四姉妹の毒気にあてられたのかジェントルマン・森雅之が「華麗なる独身主義者が、単なる哀れな独身者になってしまいそうなのでこれで退散(渡米)します」と置き手紙を残して去って行くのである。あっけにとられる四姉妹。そしてまた法事の日がやってくる。あいかわらず忙しそうな京塚叔母を待たせて余裕の衣装選びに興じる姉妹。ラストまで実にシニカルでシュールな映画でありました。

 あ、青島幸男ですか?ありゃあもう最初から戦線離脱。ママ・一宮あつ子に諭されてとっとと逃げました。

1997年03月17日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16