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新・与太郎戦記


■公開:1969年
■制作:大映
■監督:田中重雄
■助監:
■脚本:舟橋和郎
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:フランキー堺
■備考:


 春風亭柳昇の体験記に基づく人情喜劇。シリーズもの。

 落語家の与太郎・フランキー堺は陸軍ではドジばかりしているが、とうとうこの3作目で一等兵に昇格。補充兵の後輩もできた。だが相変わらず上等兵や後年兵にしかられてばかり。インテリの新兵・船越栄二は女房に逃げられて残された子供を親戚に預けている。親戚の家では満足に食事を与えられていないようだ。ある日、その子が父親恋しさに家出してきてしまう。息子とはぐれた船越は部隊を飛び出してしまい脱走兵と見なされる。子供を匿った与太郎はなんとか師匠に預かってもらおうと、無事に子供を脱出させるためにある作戦をたてる。

 春風亭柳昇の兵隊時代の思い出を原作としているので各々のエピソードが実に人間臭くて面白い。実際はもっとヒドイこともたくさんあったんでしょうが、そこは映画ですから茶化して描いている部分は多いと思いますけど。とにかく当時の人気落語家がいっぱい出てきます。私はあまり詳しくないのですがわかる範囲でも、小さん、円右、金馬、柳昇、歌奴(現・円歌)、夢丸。芸人さんでは関敬六、世志凡太、そして伴淳三郎。当時の芸人名鑑としてぜひビデオを手元に置きたい作品です。

 外出日、与太郎は上等兵の家に行っておかみさん・都家かつえに蛸をごちそうになりますが、それが古かったもんだから、腹をこわして病院へ。そこで看護婦にポーっとなって(しかも二人に)ラブレターを送ることにします。同じ文面を二度書くのが面倒だと思った与太郎は、カーボン紙でコピーすることを考えます。ですがそんな不埒な目論見が成功するわけもなく、また、与太郎にホモ(ホの)字の兵長(う、梅津栄!!)が病院にいたため、あこがれの看護婦さんの目前で言い寄られたりして、あっさりフラレます。看護婦さんのお返事もカーボン紙ってのがよかったですね。

 船越栄二と子供エピソードはなかなか泣かせます。戦時下ですから、息子を預かった家も苦しかったのでしょう。与太郎は炊事班になったので食事をちょろまかしてトイレに匿った子供に持っていきます。そこを見つけた班長・早川雄三が与太郎をブン殴りますが、見かねて飛び出した子供の健気さにほだされ、配給トラックに子供を隠して脱出させる策を与太郎に授けます。無事に脱出した子供は与太郎の師匠が預かることになり、船越栄二は安心するのでした。

 そして大団円は演芸大会。ちょっと「南の島に雪がふる」(1961年・東宝)を思い出しました。与太郎はこのときばかりはヒーローです。舞台の上でヤンヤの喝采を浴びながら、助六をキメて「あけましておめでとうございます」これ正月映画だったんですね。劇中、ラッパ兵の訓練を与太郎が受けるシーンがあります。与太郎はやっぱりヘタクソなのでした、、ドラムス(鼓笛隊)だったらよかったのにね、と思ってしまいました。

1997年01月05日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16