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バカ政ホラ政トッパ政


■公開:1976年
■制作:東映
■監督:中島貞夫
■助監:
■脚本:中島貞夫
■原作:
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:菅原文太
■備考:トッパ政:とっぱらい=当日払いの意。


 中島貞夫のチンピラ映画には男の美学というものがほとんど感じられない。そうしたモダンな、フランス映画のようなテイストはもっと高く評価されてもよいと思うのだが、どうか?

 「人斬与太・狂犬三兄弟」(1972)はハミダシ者の三人が大手暴力団に対抗して全滅する話だった。この「バカ政ホラ政トッパ政」も大筋は同じなのだが、「仁義なき戦い」シリーズも終焉に近く、同時進行していた「トラック野郎」でコミカルなイメージになった文太のアイデンティティと時代の空気がシンクロしている。

 1960年、関西暴力団の大物を刺殺した通称、バカ政・菅原文太が3年の刑期を終えて銀座に戻ってくる。すでに情婦・倍賞美津子は姿を消しており、ノミ屋のトッパ政・ケーシー高峰や、学生やくざで詐欺常習犯のホラ政・中山仁らのちんぴらがノシていた。文太は、兄貴分の組長・中丸忠雄への挨拶がわりに、インチキ麻薬をもちこんだケーシー高峰と中山仁をしめあげる。だが、なかなか根性があると見込んだ文太は、ケーシーと中山仁と義兄弟になる。

 銀座をノシ歩き、興業会社「太陽カンパニー」を設立した三人。だが、中丸が「銀座興業」を名乗り利権を奪いに来た。兄貴分に遠慮する文太をしり目にケーシーと中山が「銀座興業」とトラブルを起こす。

 そこに目をつけた幹部・成田三樹夫が文太に株主総会に絡む利権話しを持ってくるが、ウラがあると読んだ文太がこの話をブチ壊してしまう。成田は中丸に文太たちを銀座から所払いにすように指示。文太の弟が被害を受けて逆上し成田を刺殺する。成田の葬儀に出向いた三人が襲撃される。ハチの巣になる三人の姿がストップモーションになって映画は終わる。

 軽いなあ。ものすごーく軽い。ケーシーのギャグは達者なんだが、やっぱりこういう「笑い」が時代を超えて生きるってのは難しいわけで、今見るとトホホ。まさか藤山寛美のような役割をケーシーに期待したんじゃないだろうね。そりゃ、無理ってもんだよね、相手は天才なんだから。中山の「やんちゃ」は垢抜けないけど、新鮮味があるのが救い。文太はすでに完璧な「桃次郎」になっていて、倍賞との恋愛模様も「トラック野郎」風味に仕上がっている。

 総会屋につけこまれたが結局やくざどもを手玉にとってしまう「天下の丸菱商事」の副社長が神田隆、重役が川合伸旺。一応カタギの会社なんだけど、、ヤな会社だねえ、どうも。これじゃあ勝負にならんよね。「丸菱」じゃなくて「山菱(の代紋)」じゃあないの?って疑いたくなったぞ。文太を逮捕しに来る刑事が川谷拓三(刑事、ですよ。念のため)だし。中山仁を拓三が取り調べるところなんて、もうどっちがヤクザだかわけわかりません。

 エログロはどうかな?江東区の暴力団の組長を襲撃して、情婦を抑え込み木刀で痛めつけた後、組長のエンコ詰めを三人で「数え歌」を歌いながら実行するところは陰惨なムードで良かったけど、良かったのはそこだけで、熱海の温泉宿でデブ芸者と乳くりあうケーシーとか、ホステスをたらし込む中山仁あたりの「お色気シーン」が総じて空々しくて興ざめした。

 成田三樹夫はサウナで文太たちに襲われ、腰タオル一丁で街頭へ連れ出されるが、いやあ成田三樹夫って結構マッチョ。そのテの「男のからだ」にキュンとくる趣味をお持ちの方々へのサービスカットなのか?考えすぎだな、やっぱ。女性の目から見てもちょっとドキドキ。でもロケに半裸で引っぱり出された成田三樹夫は大変だったろうなあ。一瞬だけど、ちょっと情けない姿だもんね。

 そんなこんなでイマイチの映画だったが、銀座興業が招いたダウンタウンブギヴギバンド(本物)が宿泊先で暇つぶしに賭けポーカーに興じているシーンが異常なリアリティがあって面白かった。

 ちなみに菅原文太と中丸忠雄は同い年であるが、ただの一度として役柄の上で「タメ」になったのを見た事が無い。かならず立場上、中丸さんの方が上で、文太さんが若手だった。蛇足でスンマセン。

1997年03月22日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16