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ゴルゴ13


■公開:1973年
■制作:東映
■監督:佐藤純彌
■助監:
■脚本:さいとうたかお
■原作:さいとうたかお
■撮影:
■美術:
■音楽:
■主演:高倉健
■備考:健さんファンはここにも。


 原作者のさいとうたかお先生によればこの主人公のモデルは精神的にも肉体的にも高倉健、だそうだ。なのになぜ、こう実物がやったらヘンなのか、謎だ。大体、漫画を実写にして成功した映画なんかみたことない。そういう意味では「釣りバカ日誌」は偉大なんだけどな。

 ゴルゴ13ってたしか白系ロシア人との混血かなんかじゃなかったっけ?ロマノフ王朝の末裔とかなんとか、、。ほら、眠狂四郎もそうだよね、確か。「白系ロシア」、なんともロマンな響きだ。そこへ、なんで高倉健が出てくるかなあ、というのが素直な感想。 

 まず出演者は健さん以外は全員イラン人である。だから画面を見ていただけでは誰が誰だかさっぱりわからない。役者の名前もカルメンとかモセメとかバナイとかいう全然聞いたことがない(あたりまえだが)現地のスターばかり。警察関係者も町角のちんぴらもいっしょくたになってしまってややこしいことこの上ない。だってイランの人の顔の区別なんかつかないもんね、私。

 イラン人なれしていない日本の観客のために東映はディズニー映画のように日本語吹き替えにしてくれた。山田"ルパン三世"康雄、北浜"サマンサ"晴子など洋画の吹き替えではお馴染みの面々が勢ぞろい。ほとんど金曜ロードショーの世界。したがって映画全体が妙なチープさに包まれてしまったがツライところだ。いや、吹き替え陣に文句があるのではなく、なんとなく、この、いきなり映画館で茶の間のテレビ見ているような錯覚を起こさせたという意味で、ね。

 今回は中近東の犯罪組織の大物ボア(蛇と同じ名前)がゴルゴのターゲットだ。超法規的待遇を受けているこの大ボスに手を焼いたイランの政府諜報機関が国際的なスナイパー・デユーク東郷=通称・ゴルゴ13に暗殺を依頼する。交渉の場に現われたゴルゴ13は、握手をしない(原作参照)、背後に立った捜査官を一撃で倒す(原作参照)などうわさ通りの男だった。

 ゴルゴ13は漫画の主人公だ。まさかあんな「面取り」したような面相の人間が実在するとは思わないからイメージ的には完璧に踏襲なんかできないというのはしかたない。したがって、これは高倉健の「ゴルゴ」なのである。あくまでも。

 それに制作は東映(しかも東京)だ。いくら吹き替えで日本語だからってイラン人が「お、すげえ美人だぜ」とかの下品な野次を飛ばしたり、都会的な洗練されたものごしであるはずのゴルゴが「てめえ、なんのつもりだ」なんてジャパニーズ・ヤクザのようにスゴんだりしても、「そういうものだ」と納得して見なければイケナイ。

 そしてトドメが日尾孝司。東映のドンパチ映画には欠かせない擬斗の先生。派手でわかりやすく「やられっぷりのよさ」がウリの格闘シーンを得意とする。彼のセンスはここイランでもいかんなく発揮された。冒頭、敵の組織に捕えられたイランの諜報員が薄暗い地下室で拷問にあうところなんざもう完璧に「イラン人による現代やくざ」になっていた。イラン人だろうがなんだろうがきっちり自分のテイストをつらぬく日尾先生、さすがです。

 ゴルゴといえば美女。世界各国の美女との濃厚なセックスシーンが期待されるところだ。しかしこの作品のゴルゴは原作にあるような歴戦の証である「全身の傷」がない。おまけにベッドインはするがいきなり朝になってしまい、さっさと一人で出て行ってしまうのだ。さらにガッカリすることは、お相手の女諜報員(イラン人)がシュミーズ姿でベッドに入った(乳首すらスケないのはお国柄か)上に、厚化粧のオバサンだった事だ。

 謎の地下室でムチ打ちの拷問を食らうゴルゴがちょっとSMっぽい。さすが明治大学の体育界系である健さんは結構マッチョな体でモチ肌。盲目の敵の幹部と暗闇で対決し、冷蔵庫の明りで起死回生をはかるところは「暗くなるまで待って」を彷彿とさせた。

 これは高倉健の、そして東映の「ゴルゴ13」、、最後まで念仏のように唱えながら見ていればそれなりに面白い。絶対に原作を思い出してはいけないというのがとてもツライんだけどね。

1997年02月05日

【追記】

※本文中敬称略


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■日のあたらない邦画劇場■

file updated : 2003-05-16