まむしの兄弟・二人合わせて30犯 |
|
■公開:1974年 |
|
まむしの兄弟シリーズの中でもこの作品のファンはかなり多い。シリーズ第7作。 出所したゴロ政・菅原文太はさっそく兄弟分の不死身の勝・川地民夫とともに神戸の新開地へ。そこでスリを働いていた娘東三千と知り合う。文太と川地は加賀組、組長・成田三樹夫と面倒を起こす。リンチにあっていたところを東に助けられた二人の前に弁護士・菅貫太郎が現われ、川地民夫が実は資産家の老婆・三宅邦子が大陸から引き揚げてくる時に生き別れになった息子だと告げる。 遺産相続に絡む、悪徳弁護士と暴力団の悪だくみを粉砕すべく、大活躍する「まむしの兄弟」。これはシリーズの中の一作なので、二人のモンモンの「蝮」がなぜ「線彫り」なのかは第一作を見ないと不明なのだが(一作目のラストで雨に当たって溶けてしまうのだ)。とにかく戦災孤児として固い契りを結んだ「義兄弟」ってのが「時代」である。 冒頭、出所してきた文太の目の前で、先に出所した男を迎えに来た情婦がいきなり黒塗の大型車の男たちに襲われる。「女子(おなご)になにをするんじゃあ〜」と大立ち回りを演じた文太、だが様子がおかしい。「カット!」なんて声が聞こえる。あれれ?あ!あれは工藤監督では?と、観客が呆気にとられていると、実はそれは映画のロケーションだったというオチ。「神聖な(?)刑務所の前で活動写真のロケとはなにごとじゃ〜」とやけくそになったキレる文太であった。 菅貫太郎の弁護士は、まむしの兄弟の取調室でのやりとりを立ち聞きして「インチキ相続人」作戦を思いつく。菅貫太郎がニコニコと柔和な笑顔と慇懃な態度で接近してきたら、それは即、胡散臭い話に違いないのである。そしてインテリ暴力団組長の成田三樹夫とその上部団体の親分・渡辺文雄。なんて分かりやすいキャスティングだろう。嬉しいなあ。 孤児の東三千は男まさり。まむしの兄弟に紹介した「シノギ」というのが、「嫌な上司にヤキを入れる」サービス。クライアントは気質のサラリーマンの一般職。でも襲われる上司が汐路章(劇中も汐路部長、である)だったりするのであるが、なんともショボイ。ショボイと言えば、加賀組が経営するキャバレーにイヤガラセしに行くとき。糞尿がつまったビニール袋を担いで出陣したまむしの兄弟。とりあえず、成田の車に釘で「傷をつける」というセコいアプローチが泣かせます。で、あとはその「爆弾」をぶちまけるのよね、ちょっとバッチイ。 資産家の老婆を殺害しようとした成田の子分の手から三宅邦子を救出したが、隠れていたラブホテルを襲撃され、東三千がメッタ刺しにされてしまう。脱出するとき強奪したのがクリーニング配達の車で、東は白いワンピースをギッて鏡の前でおめかしする。東は実は文太が好きだったのだ。身を挺して文太との約束を守り三宅を守った東は、文太の手で花に埋めてもらう。「兄弟分」の仇討ちに燃えたまむしの兄弟。 ソファに腰を降ろした成田の額をライフルでブチ抜く文太!鮮血をほとばしらせて椅子ごと成田三樹夫がスローモーションで倒れる。そこから先はもう、一人倒れる度にバケツ一杯(そんなに多くないけど)ってくらい元気良く、流血のオンパレード。悪いやつらは、やっぱ思いっきり「くたばって」くれなきゃね!ガソリンまいてほうり投げた毛布にマッチで「ぼっ!」と火をつけるところもスローモーションが効果的でシビレます。なんかサムペキンパーの映画みたいですごくカッコイイ。 川地と文太が芦屋のお屋敷で繰り広げるオママゴトみたいな親子対面の描写と、ラストの流血戦。そして文太と喧嘩した東が歌う「幸子の幸はどこにある、、」(あがた森魚)の叙情的なシーン。お笑いと男の美学(に憧れているチンピラ)と優しさが一杯つまったヤクザ映画の傑作。 (1997年04月06日) 【追記】 |
|
※本文中敬称略 |
|
file updated : 2003-05-16